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COP22閉幕

11月19日(土)の午前2時47分(現地時間)、議長が、会議の閉会を告げる木槌を下ろし、COP22/CMP12/CMA1は、すべての日程を終了しました。

気候変動COPは、ここ数年、会期を丸一日以上延長し、日曜に終わることが続いていましたから、それに比べれば、今回は比較的早く終わったと言えます。


写真1:閉会を告げる木槌を下ろすメズアール議長(写真出典:ENB)

COP22/CMP12/CMA1では何が合意されたのでしょうか。

COP22の課題は、CMA1を開幕し、パリ協定の詳細ルール策定のスケジュールに合意することでした(参照:このレポートの最初の記事の「3. 今回は何について話し合われるの?」、パリ協定第1回締約国会合(CMA1)をいつ再開する?)。

(1)パリ協定第1回締約国会合(CMA1)の今後の進め方
パリ協定は、1年という異例の短期間で発効しました。パリ協定が採択された時点では、これは誰も想定していませんでした。
そのために、COP22でCMA1を開幕した後どうするか、という問題が起こったのです。パリ協定の発効を待つ間に詳細ルールを完成させ、CMA1でそれを採択することが想定されていましたが、詳細ルール交渉は2016年5月に始まったばかりで、詳細ルール完成までには議論しなければならないことがたくさんあります。
今回の議論の結果、COP22でCMA1を開幕して、いったん「中断する」という手順を踏むことになりました。COP23(2017年)で再開し再び中断、COP24(2018年)で再開することに合意しました。
パリ協定の詳細ルール策定は、引き続き、APAで行われることが確認され、2018年までにその作業を終えることが合意されました。COP23(2017年)ではCOPとCMAが合同で作業プログラムの実施状況を確認することになっています。
京都議定書の時は、詳細ルール(マラケシュ合意)の完成までに3年7か月、その採択までに4年かかりました。パリ協定の詳細ルールは、京都議定書の詳細ルールより複雑になることは間違いないでしょう。それは、パリ協定自体、すべての締約国を対象とするひとつの枠組みであり、緩和策だけでなく、適応策や透明性(各国の排出量や気候変動対策をどのように報告し、チェックするか)なども盛り込まれているからです。そのパリ協定の詳細ルールに2年間で合意するというのは、容易なことではありません。
COP22は、CMA1をスムーズに開幕・中断し、詳細ルール策定のスケジュールを決めることに成功しました。「せっかくパリ協定が早くに発効したのに、CMA1を2年も中断してしまうと、気候変動対策を早急にとらなければという機運が失われるのではないか」との懸念を持つ国に対しては、中間地点のCOP23でも再開するという対応で応えています。


写真2:NGOを中心とした、気候変動枠組条約ファミリーフォト(写真出典:ENB)

(2)パリ協定の詳細ルール交渉の今後の進め方
パリ協定の詳細ルール策定は、パリ協定に関する特別作業部会(APA1-2)において行われました。APAは、6つの議題を設定しており、2018年の詳細ルール完成に向けて、来年(2017年)にどのような作業を行うかについて合意しました。

(3)2018年の促進的対話をどのようなものにするか
COP21では、促進的対話を2018年に開催することに合意しました。促進的対話とは、各国が、「こんなに2℃目標の達成に足りないのなら、我が国の排出削減努力をもっと強化しなければ!」と思って、対策を強化するきっかけとなるよう、世界全体の排出削減策の進捗状況をチェックするものです。
パリ協定は、世界全体の気候変動対策を段階的に強化していくメカニズムを備えています。その中心的な役割を果たすのが、グローバル・ストックテイクと呼ばれる仕組みです。グローバルは地球、ストックテイクは棚卸しという意味です。
これは、パリ協定の目的や長期目標と比較して、国際社会全体の温暖化対策の進み具合がどの位置にあるのかを、各国による温暖化対策や支援に関する状況や、IPCCの最新報告書などの情報を基にして、5年ごとに評価するという仕組みです。最初のグローバル・ストックテイクは、2023年に行われます。2018年に開催される促進的対話は、グローバル・ストックテイクの前哨戦といった位置づけです。
同じく2018年には、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が気温上昇1.5℃未満の場合の排出削減シナリオや気候変動影響に関する研究成果をまとめた特別報告書を発表する予定もあります。来年、2018年は、世界中の気候変動対策を大きく前進させるために、とても重要な年となります。パリ協定の世界全体の気候変動対策を段階的に強化していくメカニズムがどのように機能するかを世界中が注目しています。
ところが、この促進的対話をどのように行うのかは決まっておらず、今回の議題にも入っていませんでした。
協議の結果、促進的対話をどのように行うかについては、COP22議長とCOP23議長がリードして、締約国間の協議を行うことになりました。また、2017年5月に開催される補助機関会合で、COP議長が促進的対話の準備状況について報告を行うことも合意されました。


写真3:会場のベンチ。太陽光パネルがついていて、携帯電話などを充電することができました。

(4)今後、適応基金をどのように位置づけるか   今後、途上国に対する支援をどのように制度設計するかは、とても重要な問題です。中でも、資金支援に関する議論は、大きな注目を集めています。
今次会合では、COP22やAPAにおいて、今後、適応基金をどうするかについて、大きな話題となりました。適応基金とは、途上国における適応策を支援するために京都議定書のもとに設立されたもので、資金源として、クリーン開発メカニズム(CDM)と共同実施(JI )の発行クレジットの2%を各プロジェクトから集め、それを換金して、気候変動影響にとりわけ脆弱な途上国の支援に充てるという仕組みになっています。
適応基金以外の資金支援メカニズムは、基金にいくら拠出するのか、いつ拠出するのかは、先進国が決めるため、安定的に資金が供給される仕組みとは言い難いのです。一方、適応基金は、CDMとJIプロジェクトから、いわば税金のように自動的にひかれていく仕組みですので、資金規模はある程度予測がつけやすいのです(お金ではなくクレジットがたまる仕組みで、これを換金しますので、正確な額がわかるわけではありません)。今後も適応基金を活用して適応策のための資金確保を進めることが必要との声が途上国からあがっていました。
今次会合では、今後、適応基金をパリ協定に位置づけるかどうか、また、パリ協定に位置づける場合、今後どのように議論を進めていくかについて議論が行われました。
協議の結果、パリ協定の下に適応基金を位置づけること、今後の適応基金の運営については、APAで検討を続け、2018年のCMAで詳細を決定することになりました。

COP22の主要な成果は、一言でいうならば、パリ協定の詳細ルール交渉の道筋をつけた、というものですので、わかりにくいと感じた方もいらっしゃるかも知れません。しかし、これまでにも書いた通り、世界中の人が願いを込めてパリ協定に描いた未来が実現できるかどうかは、パリ協定の詳細ルールをどのようなものにするかと、今後、各国がとっていく温暖化対策をいかにレベルアップさせていけるかにかかっています。それに向けて、一歩、着実に歩みを進めたと評価できる会合だったと思います。

ご愛読ありがとうございました!


写真4:スマイリーアースと筆者

文・写真(写真1と2を除く):久保田泉(国立環境研究所社会環境システム研究センター主任研究員)

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