モロッコでよく飲まれている飲み物。それは、ミントティーです。私が泊まっているリヤド(宿)でも、朝食の時に出てくることがあります。
写真1:モロッコのミントティー
モロッコのミントティーの作り方を紹介しますね(いろいろなレシピがあるようです)。緑茶、たっぷりの生のミントと大きな角砂糖に水を加え、15分ほど煮出します。銀製のポットから各自のグラスに注ぐ時は、高い位置から勢いよく泡立てながら注ぎます(写真2)。グラスにミントの葉を直接入れる場合と、入れない場合とがあります。甘さも苦さも強く、くせになる味わいです。
写真2:ミントティーをグラスに注ぐウェイターさん
銀のポットやトレイ、ガラス製のミントティーグラスから成るモロッコのティーセットは美しく、おみやげとしても人気があるようです。
さて、気候変動COP/CMPは、2週間にわたって開催されますが、会議がないのは間の日曜日だけです。したがって、土曜日の今日(12日)も会議が開かれました。
写真3:馬に乗ってCOP22会場の警備にあたる警察官
COP22/CMP12の折り返し地点に当たる今日、メズアールCOP22/CMP12議長は、非公式のストックテイキング会合を開催しました。ストックテイキングとは、棚卸しとか現状点検などという意味です。
10日のレポートでも書いたように、今会期中に何を話し合うか(議題)を全体会合で決めた後は、「コンタクトグループ」とか「非公式協議」などと呼ばれる、議題ごとに設置された小グループに議論の場を移します。ストックテイキング会合が開かれるのは、このような小グループがたくさん設置され、また、政府関係者以外は傍聴を許されない会合もあるので、議論の進捗状況を確認し、NGOなどオブザーバーに共有するためです。
ちなみに、気候変動COPで、ストックテイキング会合が初めて開かれたのは、COP16(2010年、カンクン(メキシコ))でした。現在の気候変動枠組条約事務局長である、エスピノサ氏が議長を務めた会合です。
写真4:小会合用の会議室がたくさんあるエリアに掲げられている、子供たちが地球を描いた絵画コンテストの優秀作品のパネル。海面上昇について描いた作品(左端上から3番目)も見られます。
ストックテイキング会合において、メズアールCOP22/CMP12議長は、COP22/CMP12の作業が「始まった」とし、16日(水)までに、それぞれの会議の結論をまとめるよう指示しました。また、パリ協定締約国会合(CMA)の進め方、 アフリカ諸国の気候変動影響に対する脆弱性、地域コミュニティーや先住民のためのプラットフォームの設置など、いくつかの議題については、メズアールCOP 22/CMP 12 議長がこれらの議題の協議をリードする人を任命したと述べました。これは、メズアールCOP 22/CMP 12 議長やモロッコ政府が、たくさんある議題の中でも、今回の会議の成果として重要だと考えていることを意味します。
写真5:バブーシュ。モロッコの伝統的な履物で、革や布を素材に用いて、手作業で成型・縫合したものです。スリッパのようなものですが、屋外でも屋内でも使用します。男性用も女性用もあります。
ここでは、パリ協定締約国会合(CMA)の進め方について、どのようなことが議論になっているのかを紹介します。
その前に、今回開催されている会議間の関係をおさらいしておきましょう。
図:今回開催される会議の一覧(出典:筆者作成)
パリ協定に関する特別作業部会(APA)とは、パリ協定の詳細ルールについて議論する会議です。APAは、気候変動枠組条約締約国会議(COP)の下に設置されています(図の赤点線枠内)。APAがパリ協定締約国会合(CMA)の下に設置されているわけではないことに注意が必要です。
パリ協定を作った時点では、各国が締結手続きを済ませるのに時間がかかるため、発効するまでには数年かかると考えられていました。そこで、COPの下に、パリ協定が発効するまでの数年間に詳細ルールを議論する会議として、APAが設置されました。APAは、詳細ルールの議論の進捗状況をCOPに対して報告します。報告を受けたCOPは、APAに対し、その後にどのように議論を進めるか、さらに指示を出します。
なぜ、パリ協定の詳細ルールを話し合う会議が、CMAではなく、COPの下に設置されたの?と疑問に思う方もいらっしゃるかも知れません。それは、パリ協定が気候変動枠組条約の下に作られていること、そして、パリ協定が発効するまではCMAは開催されないからです。そして、詳細ルールの完成の締め切りは、20XX年といった具体的な年ではなくて、CMA1までとされています。詳細ルールの議論は、今年5月に始まったばかりです。
ところが、パリ協定を作った時には想定していなかったことが起こりました。採択から1年未満という異例の短期間でのパリ協定の発効です。詳細ルールの議論は始まったばかりで、まだ何も決めていないのに、締切として設定されているCMA1が開かれることになってしまったのです。パリ協定第16条6項で、パリ協定発効後初めて開催されるCOPと併せてCMA1を開催すると定められていますので、CMA1をCOP22の期間中にまったく開催しないという選択肢をとることはできませんでした。
では、どうするのか?ということを議論しているわけです。今回、CMA1を開会するものの、短時間で中断し、2017年または2018年に再開する方向で検討されています。再開までの間、詳細ルールの議論を続けます。メズアールCOP22/CMP12議長は、①COP24(2018年、開催地未定)でCMA1を再開する案と、②COP23(2017年、ボン(ドイツ)にて開催予定)でCMA1を再開する案とを示しています。
いつCMA1を再開するかということは、詳細ルールを議論するための時間をどれくらいとるかということです。議論しなければならないことがたくさんあるので、1年では短すぎると考えて、上記①を支持する国が多いようです。これに対して、②を支持する国は、パリ協定にすべての国が合意でき、異例の短期間で発効したこの勢いを失わずに、パリ協定を実施の段階に移したいと考えており、そのためには、来年にCMA1再開会合を開く方が良いと考えているようです。
写真6:フナ広場で売られているランプ
文・写真・図:久保田 泉(国立環境研究所社会環境システム研究センター主任研究員)