第18回締約国会議(COP18)

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ダーバンで何が決まったか?ドーハで何が話し合われるか?

 皆さんは、「ドーハ」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか?私は、中東地域にあまりなじみがなく、1993年のいわゆる「ドーハの悲劇」しか思い浮かびませんでした。滞在3日目になりますが、会議場にいることがほとんどで、バスの中からしか街を見ることができていませんが、砂漠と大都市とが共存している不思議な空間、というのが私の印象です。


写真1:バスから見える風景その1。筆者が子供の頃に持っていた未来都市のイメージに近いです。

 


写真2:バスから見える風景その2。

 

 さて、今日は、昨年のダーバン会合で何が決まったかを振り返ってみたいと思います。今回ドーハで何が話し合われるかを理解するには、まず、ダーバン合意の内容を理解する必要があります。

 昨年のダーバン合意は、気候変動交渉の大きな転換点となりうるものでした。内容は、①すべての国が参加する温暖化対処のための2020年以降の枠組み交渉への道筋をつけたこと(「ダーバン・プラットフォーム」の設置。2015年までに合意することになっています)、 ②京都議定書第2約束期間の設定、③カンクン合意(2010年)の実施のための一連の決定の採択、です。


図1:気候変動交渉の流れ

 

 中でも、上記①は、最も重要な成果です。2020年以降の気候変動対処のための国際枠組みがどういうものになるかは今後の交渉次第というところが大きいのですが、気候変動交渉の大きな課題のひとつである、「先進国」と「途上国」という硬直化した二極構造を乗り越える可能性を持つ合意だからです。

 気候変動枠組条約(1992年)では、先進国(経済移行国を含む)のリストを条約附属書Ⅰに掲げて、「附属書Ⅰ国」としています。条約上、これらの国々は、自国の排出削減を行うことが求められています。京都議定書(1997年)でも、「排出削減数値目標を持つ先進国」と「数値目標を持たない途上国」という区分がなされています。バリ行動計画(2007年)では、非附属書Ⅰ国(条約附属書Ⅰ国ではない国、すなわち、途上国を意味します)は、自らの排出削減行動に関する交渉を始めることに初めて合意しました。

 条約附属書Ⅰの先進国のリストは、1992年に条約が採択された時のままです。その後、経済開発協力機構(OECD)に加盟した、メキシコ(1994年加盟)、韓国(1996年加盟)、チリ(2010年加盟)は、このリストには含まれていません。また、急速に経済成長を遂げ、温室効果ガスの排出量シェアの上位を占めるようになった中国やインドも、このリストには含まれていません。

 気候変動枠組条約は、気候変動が危険なレベルに達さないようにすることを目指しています。そのためには、地球全体で温室効果ガスを大幅に削減することが必要です。先に述べたような、附属書Ⅰ国と非附属書Ⅰ国との役割を固定化した仕組みでは、地球全体での温室効果ガスの削減の促進にうまく対応することができません。

 ダーバン合意は、「すべての国が参加する枠組み」を作ることになっています。もちろん、最終的に、これまでの「附属書Ⅰ国」と「非附属書Ⅰ国」との役割分担が維持される可能性もあります。しかし、今後の交渉で変えていく余地が生まれたのです。

 ダーバン・プラットフォームの設置は、EUや日本など、京都議定書締約国である先進国が強く主張してきたことが通った結果です。では、途上国はどうしてこれを受け入れたのでしょうか?

 途上国は、自らが主張してきた、京都議定書第2約束期間の設置(上記②)とカンクン合意(2010年)の実施のための一連の決定の採択(上記③)と引き換えに、ダーバン・プラットフォームの設置を受け入れたのです。

 中でも、途上国が強く主張していたのは、京都議定書第2約束期間の設置でした。途上国は、これまでたくさん温室効果ガスを排出してきたのは先進国なのだから、先進国が排出削減に率先して取り組むべきであると主張しています。途上国は、先進国のみが排出削減約束を負う京都議定書を、条約にある「共通だが差異ある責任」の具体化ととらえているのです。昨年のダーバン会合では、「ダーバンを議定書の墓場にすることは許さない」などの発言が聞かれるなど、京都議定書第2約束期間が設定されないかも知れないことに対する強い警戒感が示されていました。

 さて、ようやく本題。ドーハ会合で何が話し合われるか?です。昨日も書いた通り、以下の4点です。

1) 2013年1月1日以降の京都議定書の円滑な継続
2) 強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム作業部会(ADP)の作業計画の策定
3) 長期的協力の行動のための特別作業部会(AWG-LCA)の作業の完了
4) 途上国への長期的な資金支援の基盤となる新しい制度の完成及び今後の方向性の提示 

 1)を見て、あれ?ダーバン会合で、決まったんじゃないの?と思う方もいらっしゃるかも知れません。京都議定書第2約束期間を設定するためには、京都議定書附属書Bの改正が必要です。ダーバン会合では、第2約束期間が設置されることは決まりましたが、議定書の改正案として採択されたわけではありません。改正案に合意するためには、約束期間の長さ(5年か8年か)など、様々な課題を解決しなければなりません。また、ドーハ会合で改正案に合意できたとしても、議定書の規定上、2013年1月1日から議定書改正が発効することはないので、発効までに生じる空白期間についてどのように対応するかについても議論しなければなりません。仮に、第2約束期間に関する合意ができないとなると、昨年のダーバン合意のバランスが大きく崩れることになります。

 では、京都議定書第2約束期間に参加しない意向を表明している日本にとっては、ドーハ会合は重要ではないのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。そのあたりを明日以降にお伝えしていきたいと思います。

 

執筆:久保田 泉
(国立環境研究所 社会環境システム研究センター)

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