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神奈川県立海老名高等学校

目次

カリキュラム概要

都道府県名神奈川県
設置区分公立
学校名神奈川県立海老名高等学校
学校概要1979年創立の全日制普通科高校である。生徒は勉学だけではなく、行事や部活にも積極的に運営・参加をしており、活気に満ち溢れた学校である。1学年あたり10クラス規模であり約400人在籍している。全校では30クラスで約1200人の生徒がいる大規模校である。
これまでの取り組み環境教育については、総合的な探究の時間で取り組んできた。1年生では企業の行っている環境対策を調べ、それを批判的に分析し、ポスター形式で発表を実施している。
教育目標中学校教育の基礎の上に、心身の発達に応じて高等学校普通科の教育を施し、知・徳・体の調和のとれた人格を形成する。自主・自立の精神に基づき、自ら課題を発見し解決するために生涯にわたり主体的に学び続ける力を育成する。
学年2年生10クラス約400人
テーマ脱炭酸政策提言を通した持続可能な地域づくりに参画できる主権者育成
目標世界や日本、神奈川県や海老名市の二酸化炭素の排出量やその原因を批判的に考察できるようになる。また、その課題を解決するための社会システムにかかわる政策提言を海老名市に行うことができるようになる。
内容神奈川県や日本及び世界での気候変動について、相互の関係や複雑な構造を気候変動ミステリーを使用して理解できるようになる。また、現状の複雑さを理解した上で、海老名市政や脱炭素のまちづくりに参画し、具体的かつ創造的な解決策を提案できるようになることを目指す。解決するにあたって、気候変動対策としての「適応策」と「緩和策」の観点や社会システムの変化を視野に入れた政策提言を行う。また政策提言を通し、具体化した解決策の考案の難しさ、行政の合意形成手法を学ぶ。政治に直接コミットする難しさを体現させつつ、気候変動に関心を持つ議員を調べることや投票行動の重要さなど間接民主主義の重要さにも気付かせる。
大切にしたこと総合的な探究の時間での単発の授業ではなく、地理総合という教科で実施したことにより、約10回の授業を継続的に実施することができた。また授業で扱う気候分野や交通分野、産業分野などとのつながりも意識した単元づくりを行った。政策などの生徒の成果物の評価もルーブリック評価を事前に作成し、構造的な問題点を見つけることやその現実的な解決策の提案が重要であることを意識させる仕掛けを用意した。政策作成後に振り返りを行い、ねらいがどの程度達成されたかを検証できるような工夫を行い、次年度への改善につなげた。
スケジュール令和6年12月~令和7年3月
外部協力者一般社団法人地球温暖化防止全国ネット理事長 高田研
未来のためのESDデザイン研究所 高橋敬子
海老名市経済環境部環境政策課
神奈川工科大学高大連携支援室室長 村上聡
神奈川工科大学工学部応用化学生物学科准教授 和田理征

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取り組み

12月(2時間)
  • 気候変動ミステリー(神奈川版)の実施と発表
    気候変動について、神奈川版のミステリーを使用し、神奈川県や日本及び世界での気候変動問題を理解する。気候変動ミステリーのカードのつながりを班ごとにまとめ、ジグソー法でその思考のプロセスを発表する。また教員から、カード同士のつながりやその原因に関するミニ講義を行う。
1月(3時間)
  • 気候変動基調講演
    神奈川工科大学工学部応用化学生物学科和田理征准教授による気候変動基調講演の実施。理系の観点から気候変動の原因や生物への影響について講演していただいた。
  • 海老名市の分野別の気候変動の対策ワーク&テーマ設定
    海老名市による「ゼロカーボンシティ実現に向けた施策提案」に記されている①省エネ・再生可能エネルギーの利用、②住みやすく快適なまちづくり(地域交通の脱炭素)、③景観・緑地の保全、④情報発信・取り組みサポート(海老名市に関わる人々の行動変容:教育系)の4分野の観点から海老名市の気候変動の現状及び実施している対策について教員作成のプリントを使用し、海老名市の各分野の取り組みやヨーロッパ・国内の先進事例を学ぶ。それを踏まえて、4分野から扱うテーマを班(5人1グループ)ごとに選定する。
  • 現状把握(批評)とファンタジー(理想像の選定)
    海老名市が脱炭素についてどのような状態であれば理想的であるかをグループで話し合う。その際、グループで考える海老名市の持続可能性を定義する。解決策をファンタジー(理想像の選定)も含めて自由に想像しつつ、案を複数出していく。
2月(4時間)
  • 現実化(理想をどのように現実化するのか)
    想定する海老名市の理想像(脱炭素とテーマ、グループで大切にしたいことを具体化させる)を現実的に実現するにあたってどのような政策が必要か考える。他国(ヨーロッパなど)、国内の他都道府県・他市町村の事例の調査を行い、それを批判的に分析しつつ、活用する。実施する際、適応策と緩和策の2つの側面から考える。また実際に政策を実行する際に、どのような障壁があり、どのように合意形成をしていくのかをポイントとする。
  • 政策発表
    授業時間でのスライド発表をジグソー法形式で行う。クラス内で実施し、良い点や改善点をお互いに確認する。 また、作成した政策を海老名市役所の職員の方に実現可能性や創造性の観点から講評していただいた。
3月(1時間)
  • 振り返り
    最終の授業時間内を使用し、発表でのクラス内の指摘や海老名市経済環境部環境政策課の職員の方からの講評を踏まえた修正および振り返りを行う。Googleフォームで収集をする。

児童の変化

<児童・生徒の変化について>

最終授業の際に振り返りという形でGoogleフォームを使用し、回答を収集した。現段階で226件の振り返りの回答を得た。「福井県気候変動教育プログラム事業」で使用されていたセルフチェックシートを参考に、自己振り返りフォームを作成し、実施した。気候変動教育を受ける前と今のあなたの状態を比較し、理解が深まったか、もしくは考える(思う)ことができたかという観点で実施した。5段階のうち、5に近いほど理解が深まった、考えることができた状態とし、3を変化がない状態、1に近いほど理解できなかった、考えることができなかった状態として回答させている。

「気候変動教育を受ける前と比べて、気候変動には多様な要因があり、それぞれが複雑にかかわりあっていることを理解できた」という設問は4.23、「気候変動教育を受ける前と比べて、気候変動対策としての適応策と緩和策の2つの存在を理解し、どちらとも重要であることを理解できた」という設問は4.22であり、ミステリーや気候変動教育の効果が十分に発揮できたと言える。

「気候変動教育を受ける前と比べて、気候変動による将来の影響を予想し、解決に向けた理想の地域像・社会像を考えることができた」という設問は4.11、「気候変動教育を受ける前と比べて、気候変動対策として、計画的で効果的な対策を考えることができた」という設問は3.95、「気候変動教育を受ける前と比べて、気候変動に関する統計データや記事などの情報を批判的に考えることができた」という設問は3.82、「気候変動教育を受ける前と比べて、気候変動問題を解決するための理想的な地域像・社会像を考え、自分の生活を見直すことができた」という設問は3.88であった。
これらの設問は政策提言の部分とリンクしているものである。気候変動の対応策や解決策を意識しながら取り組めた一方で、効果的な対策や脱炭素政策提言に使用するデータの分析、またそれらを踏まえた自分自身の生活の変化という点においてはやや不十分であり、授業改善の必要がある。

「気候変動教育を受ける前と比べて、他者の意見から学び、気候変動問題に関して多様な立場や考え方があることを理解できた」という設問は4.26、「気候変動教育を受ける前と比べて、他者の意見を尊重し、意見が違っても協力して作業を進めることができた」という設問は4.3であった。これらの項目は対話による協働に関するものである。そのため、他者と協働しながら気候変動教育に取り組んでいたと言える。

「気候変動教育を受ける前と比べて、気候変動問題の解決に向けて、多様な視点から考え、自分の意見を述べることができた」という設問は4.11、「気候変動教育を受ける前と比べて、気候変動問題の解決に向けて、解決策を提案したいと思うことができた」という設問は4.01であった。これらの項目は主体的に政策提言などの行動に関するものである。主体的に気候変動の単元の授業に参加し、解決策を提案できたと考える。

全体を通しては、ミステリーや脱炭素政策提言を通して、気候変動の複雑さや対策の重要性を理解しており、政策作成においても対話を中心に協働することができた。一方で、脱炭素政策に使用するデータの扱いや学んだうえでの自分自身の生活を変化させる点では不十分な点も見受けられた。行動変容については、「気候変動教育を受けて個人でできる具体的な行動をしていますか?」という設問に対しては、「はい」が65.9%、「いいえ」が34.1%という結果が出た。行動変容と言えるかもしれないが、実際にどのような行動を行っているかは聞けていない、かつ「個人」に限定しているため、このデータは批判的に見る必要がある。

<児童・生徒の変化をどのようにして評価したのか>(アンケート等)

  • 気候変動ミステリーでの生徒の変化

先行実施したクラス(文理系ミックスクラス39名)でアンケートを実施した。生徒の記述(良かったところ、悪かったところ)をAIテキストマイニングで分析した。良かったところでは、「論理的思考力」や「多角」などのねらいに沿ったものに加えて、「出し合う」や「能動」などの協働性や主体性につながるような記述が多い傾向が伺えた。また複雑な関係性に関しての記述と考えられるが、「おどろいた」という文言も多く見られた。ミステリーのねらいでもある気候変動問題をシステム思考で分析し、他者と協働する点において、十分に達成されていると考える。悪かったところでは、「関連づけにくい」というワードが一番出ている。また良かったところでも「むずかしい」などの意見もあり、難易度調整が必要と判断し、他クラスでは修正したミステリーを行った。全体で行った振り返りでは、ミステリーについて自由記述の形式でコメントを求めた。具体的には「ミステリーをやっていると事象の原因を探るので理解が深まりやすい。」「ミステリーは頭を働かせて関係性を見出す分、合理的な関係性を見いだせた時はやりがいを感じられて嬉しかった。非常に面白い取り組みだったと思う。」「ミステリーの授業で、身近な事柄から世界で起きていることまで幅広く事象を扱っていたのがよかったと感じました。」「ミステリーの時に1つの気候変動の原因に対して、さまざまな要因が重なり合っていることが視覚的に確認できた。そして気候変動が身近にあることを実感した。」などの回答があり、ミステリーの重要視している個々の事象をつなげて大きな問題を捉えさせるシステム思考の長所が発揮されていると考える。

  • 政策提言の振り返り

226件の回答のうち、「提言内容と削減目標が一致するか」という質問に対しては、乖離しているもしくは一致していないなどの回答が85件見られた。上記の自己振り返りでもあるように、根拠となる数値の算出やデータの批判的検討の難しさなどを改善していく必要がある。次年度の改善課題としたい。

生徒からは、「海老名市について現状の取り組みについて知るきっかけになったので、とても良いことだと思う」、「ただ調べるだけよりも目標と行動があるからモチベーションになった」、「気候変動対策を個人でできる範囲で考えてしまうことが多かったが、さまざまな要素が複雑に絡み合っていることを学び、より広い視点で考える必要があるのだと感じました」などの好意的な意見も寄せられた。

ただ、「データを元にどうしたら削減に繋がるかというアイデアを考えることが難しい」、「実際に取り組める対策とファンタジーな対策の両方を考えたり、気候変動対策に結びつけることが難しかったです」、「少し、作業する時間が少なくて、データ等を詰める事が出来なかったので、学年末で難しいと思うのですがもう少し時間があると良かったです」などの提言までの構成や時間配分なども検討の余地があると考える。

参考資料

気候変動実施要項

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