第19回締約国会議(COP19)

気候変動影響への適応とは?(11月14日)

気候変動COPに初めて参加した方と話していたら、「この会議は、略語が多く使われていますね」と言われました。11年前に私が初めて参加した時、同じように戸惑ったのを覚えています。COP(締約国会議)もそうですし、UNFCCC(気候変動枠組条約)、ADP(強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会)、UG(アンブレラ・グループ。交渉グループのひとつで、EU以外の先進国グループを意味します)、AOSIS(小島嶼国連合。交渉グループのひとつ)、MRV((温室効果ガス排出量の)測定、報告及び検証)、REDD+(途上国における森林減少・森林劣化からの排出削減、森林の炭素蓄積の保全、森林の持続可能な管理、森林の炭素蓄積の強化活動)、GCF(緑の気候基金)などがあり、どんどん増えてきています。気候変動枠組条約事務局のウェブサイトに、用語集(http://unfccc.int/essential_background/glossary/items/3666.php(英語))があるので、気候変動に関する初めての略語に出会ったら、チェックしてみて下さい。

写真1:夜間の会議場外観

 

さて、今日は、気候変動影響への適応について、解説したいと思います。

 

 皆さんが「気候変動対策(温暖化対策)」と聞いて思い浮かべるのは、温室効果ガスの排出削減ではないでしょうか?実は、気候変動対策には、もうひとつあるのです。それが適応策です。ただし、気候変動対策は、あくまでも排出削減が主であり、適応策は、それを補完するものと位置づけられていることに注意が必要です。

適応とは何でしょうか?気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によれば、気候変動の影響への適応とは、「気候変動の影響に対し自然・人間システムを調整することにより、被害を防止・軽減し、あるいはその便益の機会を活用すること」と定義されています。適応は、基本的に地方レベルの対応とされ、具体例としては、沿岸防護のための堤防や防波堤の構築・改善、水資源の効率的な利用や、(農作物の高温障害への対応として)高温に強い品種への転換などが挙げられます。

適応策は、2020年以降の気候変動対処のための国際枠組みの重要項目のひとつです。今後、排出削減策を強化しても、気候変動影響が出てしまうことは避けられないとされています。途上国では、気候変動の影響が先進国よりも深刻化することが予測され、それによって、途上国が国内の持続可能な発展目標を達成することができなくなってしまうかも知れません。加えて、途上国では、適応策を実施するための資金、技術、能力が不足しています。そのため、途上国は先進国に対して、適応策への資金・技術支援を求めています。

適応は、以下の5つの構成要素に分けられます。①観測、②気候変動影響と脆弱性(気候変動影響の受けやすさ、または、影響に対処できない度合いを意味します。たとえば、同じ熱波でも、高齢者の方が影響をより受けやすく脆弱であると言えます)の評価、③適応計画の策定、④適応計画の実施、⑤適応策実施のモニタリングと評価。

 今日は、日本パビリオンで、適応策に関する2つのイベントが開催されたので、参加してきました。COP19では、日本パビリオンが初めて設置され、毎日、日本政府や日本の機関等の研究成果や事業の成果などを発表するサイドイベントが開催されています。

写真2:日本パビリオンの案内

 

1つ目は、環境省と(独)独立行政法人国際協力機構(JICA)による、「我が国の適応支援:国家適応計画と保険(インドネシアの事例から)」です。このイベントでは、国際レベルでの適応支援策がどのように進んできたかや、インドネシアの適応計画の策定・実施・モニタリング及び評価の経験や農業保険の経験、国際レベルの適応策の中での保険の役割についてのプレゼンテーションがありました。

写真3:サイドイベント「我が国の適応支援:国家適応計画と保険(インドネシアの事例から)」の様子((写真提供:(独)国立環境研究所環境計測研究センター Pang Shijuan氏)

 

2つ目は、(独)国立環境研究所と国連環境計画(UNEP)の気候変動に対する脆弱性、影響、適応に関する研究プログラム(PROVIA)による「気候変動影響適応の課題への対応:適応研究とパートナーの参加のさらなる促進のための双方向セッション」です。このイベントでは、PROVIAが、脆弱性及び影響評価を担う研究者コミュニティーに向けて、研究の優先事項のリストを作ったことなどの活動の紹介や、日本の研究プロジェクトである、環境省環境研究総合推進費S-8「温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究」がどのように国レベル及び地方レベルの適応策策定に貢献してきているかの紹介がありました。その後、イベント参加者とパネリストとの間で、脆弱性・影響・適応に関する研究がどのように政策決定過程に貢献するか、その際の課題とは何か、どのようにそれらを乗り越えるかなどについての意見交換がありました。

 

 15日(金)には、2020年以降の国際枠組みの各主要項目についての議論が行われる予定です。もちろん、適応策も取り上げられます。2020年以降の国際枠組みについて議論している、強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)共同議長から、各国に対し、適応策について、以下2つの質問が投げかけられています。

1. 既存の適応制度の強化とは何を意味するか。各国内での適応策の実施の強化や、途上国に対する適応策支援を促進するために、2020年以降の国際枠組みにどのようなインセンティブを盛り込む必要があるか。

2. 地球規模の適応目標の設定を提案している国があるが、具体的な要素としてどのようなものが考えられるか。これを2020年以降の国際枠組みにどのように盛り込むことができるか。

 

 これらの質問に対し、各国がどのように反応するか、会議を聴くのが楽しみです。

 

文・写真1及び2:久保田泉(国立環境研究所社会環境システム研究センター主任研究員)

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