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COP17と星の王子さま

 COP17のロゴ(写真)を初めて見たときから、ちょっと気になっていたのです。


写真1 COP17/CMP7のロゴ

 会議の公式サイトによれば、このロゴには、「COP17/CMP7が、すべての途上国と先進国とが、対話と合意を通じて、未来に向けて、今日この地球を守るため、衡平性、透明性が確保された、包括的な解決策の実現に向けて協力する機会になる」という意味がこめられているそうです。

 ロゴ上部の木は、バオバブで、耐久、保全、創造、知恵、対話の象徴だそうです。バオバブは、生命力の非常に強い木であり、特にアフリカ地域では、実を食べたり薬にしたりするようで、役立つ木と認識されているようです。また、バオバブが、まるでさかさま(根が上)になっているような独特のかたちをしている理由については、各地でいろいろな言い伝えがあるようで、このことからもアフリカの人々にとって身近な木であることがわかります。

 ロゴ下部の地球は、浸食され、危機に瀕しているようです。これは、COP17/CMP7で前向きな成果が緊急に必要であることを示しているそうです。

 これらの公式サイトの説明を読んでも、なぜ気になるのかがわからないでいました。ダーバンに来てから、ある知人に、「このロゴ、何だか気になるんですよ」と言ったら、「『星の王子さま』じゃない?」という反応が返ってきました。そうです、それです!

 先に書いたように、バオバブは、アフリカ地域では、人々の生活に身近で役に立つ木とされていますが、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの小説『星の王子さま』では、王子さまが住む小さな星を破壊してしまうかも知れない厄介な木として描かれています。バオバブの芽が出てきたら、きちんと抜いておかないと、バオバブが穴をあけ、星が割れてしまうのです。王子さまはこう言います。「バオバブはほうり出しておくと、きっと、とんださいなんになるんだ。ぼくは、なまけものがひとり住んでいた星を知っているけどね。その人は、まだ小さいからといって、バオバブの木を三本ほうりっぱなしにしていたもんだから・・・」。

 『星の王子さま』の解釈にはいろいろあり、サン=テグジュペリがいったい何を言おうとしてバオバブのエピソードを出しているのかについても諸説あるようです。筆者は、『星の王子さま』のメッセージのひとつとあわせて、今の温暖化交渉の状況を重ね合わせました。


写真2 条約事務局の「変革へのモメンタム・イニシアチブ」のポスター。とても印象的でした。

 今日、日本がダーバン会合初の化石賞を受賞しました。カナダ、ロシアとともに2位です。理由は、京都議定書第2約束期間に参加する意思をまったく見せなかったからとのことです。

 ダーバン会合も最終日を残すのみとなりました。今日(12月8日)も、閣僚レベルと事務レベル双方の交渉が深夜まで続いているようです。今朝、COP/CMP議長によるストックテイキング会合が開かれました。条約作業部会(AWG-LCA)からは、閣僚レベルの協議に送る事項として、①共有ビジョン(2050年の世界全体の削減目標や、ピークアウトをいつにするか等)、②先進国と途上国の排出削減策、③適応委員会(委員の構成、報告等)、④対応措置(条約や議定書に基づいて先進国がとる温暖化対策のこと。産油国は、この対応措置によって経済的な影響を受けるとし、補償を強く要求しています)、⑤長期目標の妥当性の定期レビュー(レビューの範囲や、実施機関をどこにするか等。第1回レビューは2013年開始です)、⑥セクター別アプローチ(農業に関する作業計画とセクターアプローチの全体枠組みを策定するプロセス)、が挙げられました。議定書作業部会(AWG-KP)からは、合意形成のためには政治決定が必要だが、技術的事項についてはさらに詰めることが可能であると述べました。AWG-KPでは、第2約束期間に関してどのような合意をするかについての作業が続いているようです。

 明日(あるいは明後日の早朝?)、私たちはどのような成果を見ることになるのでしょう。ロゴにこめられた期待にあるような合意ができるでしょうか。交渉は、今なお難航しているようですが、希望を持って待ちたいと思います。

参考資料:
COP17/CMP7公式サイト(英文) http://www.cop17-cmp7durban.com/

執筆:久保田 泉
(国立環境研究所 社会環境システム研究センター)

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