バール議長は31日17時30分ごろ、28日に発表された同議長によるデリー宣言の非公式案 を改訂案(FCCC/CP/2002/L.6 )を発表しました。
この改訂案では、非公式案と同じく「気候変動と持続可能な開発に関するデリー閣僚宣言」という題がつけられている一方、非公式案に「温暖化の悪影響に対 する適応 は途上国にとっての大きな優先課題である」と記されていたものが、途上国にとってだけではなく「すべての国々」と書き直されました。また、「途上国はとりわけ脆弱である」と新たに記されているほか、それらのための措置として、気候変動枠組条約とマラケシュ合意に基づく既存の約束をすべて実施することが明記されています。そしてさらに、最後の段落で京都議定書を批准していない締約国にその批准を促すなど、非公式案の内容を大きく変えたものとなっています。
この改訂案の発表に先立って、「気候変動枠組条約と京都議定書の実施」という共通テーマのもとで、ラウンドテーブル第二部「気候変動と持続可能な開発」 と第三部「総括」が開催されました。南アフリカ共和国のヴァリ・モーサ環境観光大臣を共同議長に迎え、約50カ国の代表や産業界の代表が発言しました(写真右 Photo Courtesy of IISD /ENB-Leila Mead)。
二日目のラウンドテーブルでは、多くの国々が、地球温暖化の影響は未来に起きるのではなく、すでに現実のものとなっているとしたほか、京都議定書の早期 批准と発効を求める発言が相次ぎました。また、米国などは経済成長なくして持続可能な開発は不可能であると発言し、ドイツなどは再生可能エネルギーについ てデリー宣言に盛り込むべきと訴えました。主に途上国は近い将来において地球温暖化が経済開発にとっておそらく最大の阻害要因の一つになるだろうとし、貧困をなくす必要性を強調しました。さらに、他の国々からは温暖化に対する緩和(温室効果ガス排出削減など)措置と適応措置が表裏一体であるという指摘やクリーン開発メカニズムと持続可能な開発との関連性などについて発言がありました。
バール議長は第三部「総括」の終わりに、「私が思うに、デリー宣言は、途上国の環境問題に関する新たな約束につながりうるような、固有かつ新たなプロセスないし行動を含めるための機会ではない。」と述べました。
19時30分より、数十人規模の小さな会議室で、デリー宣言の改訂案に関する非公開の協議が開催されました。議論は夜遅くまで続き、結局、11月1日の朝に最終草案ができあがることになりました(写真左 Photo Courtesy of IISD/ENB-Leila Mead)。
31日は、10時10分ごろから第17回実施に関する補助機関会合(SBI17)の全体会合も開催され、残されていた資金供与メカニズムと非附属書I締約国(いわゆる途上国)の国別報告書について話し合われました。
非附属書I締約国の4回目の初期的な国別報告書の作成と統合の検討に関する議論のまとめ採択され、COP8に勧告されました (FCCC/SBI/2002/L.23)。同文書には、非附属書I締約国が国別報告書を作成するためには資金や技術が必要であることが結論付けられるとともに、条約の発効から3年以内に初期的な国別報告書を提出してなかった締約国は、なるべく早くそれを提出することとされました。しかし、最後発発展途上 国については、提出は自由裁量にまかされることとなりました。
非附属書I締約国の国別報告書のガイドラインの改善については、議論のまとめ案が間に合わず、審議は一時中断しました。結局、11時10分に会議が再開されましたが、また議論のまとめ案は間に合いませんでした。エストラーダSBI議長は強引に議論のまとめ案がないまま、議論を次回SBI18に先送りする という決定をしようとしましたが、カナダが「これは通常のやり方とはいえない」として文書の作成を要求しました。これに対して、議長は11時18分ごろに審議を一旦終了させ、続きの時間と場所は翌日知らせるとしました。
・デイリープログラム(英文)
・COP8ウェブ中継 (英語) COP8やSB17の会議、記者会見の様子をインターネットで見ることができます。