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京都メカニズム

京都メカニズム(議定書第6条、第12条、第17条)

京都議定書は、国内の対策だけではなく、他の国と共同で実施した温暖化対策事業によって生じた削減量をで削減したものとするしくみや、他の国から排出削減量を買う制度を使って、議定書の削減目標を達成することを認めています。これが共同実施(JI)、クリーン開発メカニズム(CDM)、排出量取引(ET)という制度で、「京都メカニズム」とよばれています。この制度により、各国は海外の自国で温暖化対策を行うより安い費用で排出を削減できる場所で対策を行ったり、安い排出枠を購入したりすることで、より経済的に削減目標を達成することができると考えられています。
また、京都メカニズムの制度を具体的にどのような制度にするか、どのように運用をするかについて、京都議定書では決められておらず、2001年11月にモロッコで開催されたCOP7でその運用に関する以下のような詳細なルールが決められました。

京都メカニズム全体

補完性(Supplimentarity)について

議定書では、附属書締約国は、削減目標を達成するために、「京都メカニズム」を利用することができるが、各国内で実施する対策に対して「補完的」にのみ利用できるとされています。COP7で成立したマラケシュ合意では、「京都メカニズム」の利用が「補完的」に行われるための制限は、数量的な形では設けられず、定性的な表現に止まりました。しかし、削減目標をもつ国は、メカニズムをどのように国内対策に補完的に使ったかという情報を国別報告書と一緒に提出しなければなりません。これらの情報は、遵守委員会の促進部で審査されます。

原子力関連事業の扱い

共同実施(JI)やクリーン開発メカニズム(CDM)のもとで行われた原子力事業から生じる排出削減量(JIの場合は、排出削減単位/ERUs、CDM の場合は、認証排出削減量/CERs)は削減目標の達成に使うことは「差し控える」とされ、実質的には使えないことになりました。 

京都メカニズムの参加条件

京都メカニズムに参加する国は、以下の条件を満たしていなければなりません。京都メカニズムの参加条件を満たしていないという認定とそれに対する措置の検討は、遵守委員会の履行強制部が行います。
1. 京都議定書の締約国であること
2. 決められた方法で割当量を計算していること
3. 決められた方法にそった温室効果ガスの排出、吸収量を推計する国内制度があること
4. 決められた方法にそった排出削減量を管理する国内登録簿を作成、整備していること
5. 決められた方法にそった温室効果ガスの排出量と吸収源からの吸収量に関する最新の排出目録を毎年提出していること

日本などの強い要望で、上記の条件が満たせず京都メカニズムへの参加資格の停止を受けた国が資格を回復する方法が、遵守制度の中で規定されました。また、排出量と吸収量のモニタリング、報告、審査(第5条、第7条、第8条)の議論でも資格を回復する方法を今後決めるということが盛り込まれました。

各メカニズムについて

共同実施(JI:議定書第6条)

附属書I締約国(先進国と呼ばれることがある)同士が共同で温暖化対策事業を行い、その事業によって削減された排出削減量を、事業の投資国と事業の受け入れ国とで分け合うことができる制度のことです。例えば、日本がウクライナで温室効果ガスを削減する事業を行うと、その事業によって生じた排出削減量を、事業の投資国(日本)と事業の受け入れ国(ウクライナ)とで分け、それぞれ自国の温室効果ガス削減分として算入することができます。
2000年以降の事業は決められた検証手続きを満たせばJIとして認められるが、排出削減量(JI関連事業から得られたものは排出削減単位:ERUs/Emission Reduction Unitsと呼ばれる)は、2008年以降になるまで発行できません。
その事業の受け入れ国が京都メカニズムに参加するための条件を満たしている場合、事業受け入れ国が独自にERUsを発行できます。しかし、その事業の受け入れ国が京都メカニズムの参加条件を満たしてしていない場合、監督委員会の検証手続きを通せば、ERUsを発行することができます。ERUsは、割当量の 2.5%まで繰越できます。
監督委員会のメンバー10名で、議定書発効後に開催される締約国会合(COP/MOP)で選出されます。メンバーの内訳は、附属書に掲載されている市場経済移行国から3名、それ以外の附属書締約国から3 名、非附属書締約国から3名、島しょ国から1名です。採決方法はコンセンサス(注:全会一致ではありません。反対がないという意味です。)ですが、それで合意に至らない場合は、4分の3の多数決となります。

クリーン開発メカニズム(CDM:議定書第12条)

附属書I締約国が技術や資金を提供し、非附属書I締約国(途上国と呼ばれることがある)で温暖化対策事業を行い、共同実施と同じように、その事業によって排出削減された量(CDMの場合は認証排出削減量:CERs/Certified Emission Reductionsと呼ばれる)を、事業の投資国と事業が行われる国とで分け合うことができるという制度です。事業は、事業の受け入れ国となる途上国の持続可能な発展を助ける目的で行われなければなりません。
CDM理事会がCDMを行う事業者を認定し、事業から発生する排出削減量を、検証手続きを通じてCERsとして認めます。附属書締約国はそのCERs を削減目標達成の一部として使うことができます。 2005年12月31日までに認定された事業は、2000年1月1日まで遡って、その事業によって生まれた排出削減量をCERsとして認められます。CERsは、割当量の2.5%まで繰越できます。また、CDMに公的資金を利用することはできますが、CDMがODAの流用となってはなりません。
CDM 理事会のメンバーは10名でCOP7ですでに選出されました。メンバーの内訳は、国連の5つの地域グループから1名ずつ、小島発展途上国から1名、非附属書国から2名、附属書国から2名です。日本からも理事会メンバーが選出され、副議長になりました。議長は、アンティグア・バーブーダのジョン・アッシュ氏です。

CDM理事会の主な仕事 

* CDMの監督
* 事業者をCOP8で認定すること
* 小規模CDMの実施方法や手順を作成し、COP8に提言すること
* 議定書発効後に開催される締約国会合(COP/MOP)に報告すること
* 事業者や投資家への情報提供
* CERsの発行、移転を管理するCDM登録簿の作成整備
* 実際のCER発行、移転
第1約束期間(2008年から2012年)は、植林と再植林に限定して、吸収源に関する事業を行うことができます。ただ、これらのCDMとして行われる吸収源関連事業から得たCERsについては、基準年の排出量の1%までしか削減目標達成に使うことが出来ません。CDMのもとでの吸収源関連事業の実施方法や手順については、今後の補助機関会合で検討し、COP9で決定することになっています。
また、収益の一部(CERsの2%)が、発展途上国締約国が気候変動の悪影響(たとえば海面上昇など)に適応するための支援を行う「適応基金」に拠出されることになっています。

排出量取引(ET:議定書第17条)

京都議定書の削減目標をもつ国(附属書B締約国)の間で、排出割当量の一部を取引することができる制度です。
排出量取引によって京都議定書の削減目標をもつ国が自国に割り当てられた排出削減量を売りすぎてしまい、削減目標が達成できなくなることを防ぐために、京都メカニズムに参加する各締約国は、約束期間をとおして、自国の国内登録簿に定められた割当量を保有しなければなりません。このしくみを「約束期間リザーブ」(Commitment Period Reserve)といいます。保有すべき量は、割当量の90%の量もしくは、審査を受けた一番新しい排出目録を5倍した量のどちらか低い方です。だいたい前者が買い手となる国に、後者が売り手となる国に適用される量と考えられています。

割当量の勘定方法(登録簿など:議定書第7条4項)

JI事業を通じて事業投資国、事業受け入れ国が獲得できる排出削減単位(ERUs)、CDM事業を通じてCDM理事会が発行する認証排出排出量(CERs)、議定書の第3条3項、第3条4項に定められている国内の吸収源から得られる吸収単位(RMUs/Removal Units)、そして、排出量取引で割当量を売る際に京都議定書の削減目標をもつ国が発行する排出割当単位(AAUs/Assigned Amont Units)は、排出量取引制度のもと全ての登録簿間で自由に移転可能となりました。
京都議定書の削減目標をもつ国はそれぞれ国内登録簿をもち、ERUs、AAUs、RMUs、CERsを管理します。ERUs、AAUs、RMUs、 CERsには、約束期間、発行国、種類、個別番号、プロジェクト番号などがつけられ、その移転、取得に関する記録・追跡を、条約事務局のもとコンピュータデータベースで管理します。
国内登録簿の仕組みやデータベースは、議定書の締約国会合(COP/MOP)で技術的な標準に適合させます。国内登録簿には、保有口座、取消口座、償却口座を作ります。京都メカニズムに参加する法人がある場合は、 法人用の口座をそれぞれ作ります。
AAUsは、無制限に次の約束期間に繰り越すことができます。ERUsとCERsは、それぞれ割当量の2.5%まで次の約束期間に繰越することができ、RMUsは、繰越できません。
*AAUs、ERUs、CERs、RMUsは地球温暖化係数をもちいて算定される二酸化炭素換算1メトリックトンを1単位とします。

附属書I締約国とは

気候変動枠組条約の附属書Iに書かれている締約国で、西側先進国と旧ソ連・東欧諸国(経済移行国)の40カ国とEU。

附属書B締約国とは

京都議定書の削減目標を持っている国もこと。議定書の附属書Bに明記されており、西側先進国と旧ソ連・東欧諸国(経済移行国)の38カ国とEU。附属書締約国に入っているトルコやべラルーシが入っていない。

非附属書I締約国とは

条約に参加している国のうち、附属書I締約国以外の締約国で、主として開発途上国を指す。

関連情報

* 条約事務局(UNFCCC)の京都メカニズムページ(英語)
これまでの経緯や関連文書の一覧などを掲載。

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