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vol.25 EUと日本、米参加働きかけの戦略と戦術で違い

7月8日、マルゴット・ヴァルストレムEU環境相、オリヴィエ・ドゥルーズベルギーエネルギー・環境国務大臣、イエナ・ゲルムバーレスウェーデン副首相(写真右から)がEU代表として来日しました。 9日には、田中真紀子外務大臣、小泉純一郎首相、川口順子環境大臣と会談を持ちました。その後、EU代表団と川口環境大臣との共同記者会見が開催されました。
川口環境大臣はEU代表団と率直な意見交換を行うことができたとし、その成果として以下の点を上げました。
(1)COP6パート2で多くの点において合意できるように全力を尽くすことに合意した。
(2)アメリカ参加の重要性、そして、そのための日本の努力についてEUの支持を得た。
(3)全ての国から京都メカニズム、吸収源、遵守、補完性について柔軟性を求められていることを確認した。
(4)途上国問題にEUと日本で協調して対処していくことを確認した。
ゲルムバーレスウェーデン副首相は、「日本からは、京都議定書についてアメリカと対話を続けるという考えを聞いた。」と述べ、さらに「来週は重要な会議 がある。全ての国が係わり、批准の手続きが始められるような合意をしたい。日本は、いくつかの問題について時間をかけたいようだが、EUは批准などの問題について迅速に進めたいと考えている。」と話しました。
ヴァルストレムEU環境相は、「日本もCOP6パート2で議定書の運用ルールについて交渉するといってくれた。いくつかの点について実質的な交渉を行い たいと考えてくれているようだ。その点については大いに興味がある。しかし、EUと日本では、いかにアメリカに働きかけるかについての戦略と戦術が少し違っているようだ。」と述べました。 
その後、以下のような質疑応答が行われました。
Q. アメリカへの働きかけるかけ方について戦略と戦術が日本とEUで違うとのことだが、その違いについてもう少し具体的に聞きたい。
A. ヴァルストレムEU環境相
アメリカへどのように働きかけるかという点で見解が違うようだ。もしかしたら、日本のせいで、アメリカがボンの前にポジションを変えるかもしれない。しかし、個人的に、私はボンの前にアメリカがポジションを変える可能性は少ないと考えている。
Q. EU代表団を日本に派遣する目的は、アメリカ抜きでも批准するかどうか確約を取るためと聞いた。実際、確約を取る場面があったのかどうか知りたい。
A. ヴァルストレムEU環境相
川口大臣のほうがよくわかっていらっしゃるので、川口大臣に話していただいたほうがいいと思う。この代表派遣は、イエーテボリで開催されたEUの首脳会談で決まったことである。我々代表団には、この難しい交渉過程を進め、京都議定書を生かす使命があると考えている。我々EU代表団は、日本やオーストラリアに対し、なぜ、アメリカを待てないのか。なぜ、前に進まないといけないのかを訴えた。しかし、日本やオーストラリアは、アメリカに耳を傾けると答えた。
A. 川口環境大臣 
日本は、幅広い国の参加を得、2002年の発効を目指し、COP6パート2の成功に向けて全力を尽くす。その際、全ての国が一つのルールの元で行動することが重要で、日本としては、日米協議を行い、それを通じて京都議定書の精神を維持しつつアメリカを含めた合意を粘り強く続けるということに対し、EUの 理解と協力を求めた。 また、日本は、京都議定書の削減目標を達成する国内努力を引き続き行っていくとも述べた。  協議を一回やったからアメリカが変わるとは考えていない。EUも日本も京都議定書のモメンタムを維持することについては意見が一致している。難しい道のりがだが、首相が述べたようにまだ時間があり、最後の最後まで努力すべきだと考えている。
Q. 今週水曜日にプレスコット英副首相が来日するが、EUはこのような二国間協議を歓迎するのか。
A. ゲルムバーレ スウェーデン副首相
EUとしてもちろん歓迎する。イギリスのアジア歴訪地の一つとして日本が入っている。EUは加盟国の15カ国がまとまり、一つの意見をもっている。その意見を多くの場面で発表できることはとてもいいことだと思う。
Q. キャンプデービッドでは、小泉首相が達成期限を遅らせるなどの修正案をブッシュ大統領に提案したという報道があるが、来週、日本はそのような修正案を提案するのかどうか。そうであればどのような案を出すのか。また、EUはその修正案を受け入れるのか。
A. 川口環境大臣
今、アメリカに対し、日本は修正案を検討しているわけではない。私は、アメリカに行って、総理がおっしゃったような気候変動に関する共通点や行動を探求するのだ。アメリカが今、何を考えているのか聞くこと、それがスタートだと考えている。
A. ドゥルーズ ベルギー エネルギー・環境国務大臣
EUの首脳は京都議定書の批准を再確認しているし、京都議定書の削減目標を重んじている。日本も政策と措置を実行し是非、この目標を達成してほしいと考えている。
A. 川口環境大臣   
先ほどの発言について付け足しだが、当然、日本はアメリカに対して、京都議定書への参加の重要性を伝えようとしている。その中で、EUもアメリカの参加が大切といっていて、EUも共通項をもつことは大切といっているので、EUにも十分理解してくれていると思う。
Q. 京都議定書の精神とは一体何か。
A. 川口環境大臣
日本としては、京都議定書についてそれは前の条約からの一歩前進したものとして重要と考えている。法的拘束力、削減目標、達成期限、途上国の参加に対し て共通だが差異ある責任を認めていることについて日本は重要と考えている。それについてEUにも理解してもらったと思う。
A. ゲルムバーレ スウェーデン副首相
精神は重要だが、京都議定書には精神以上の意味がある。議定書はコミットメントなのだ。だから現在あるテキストのまま維持されなければならないと考えている。
A. 川口環境大臣
また、付け足しだが、京都議定書には柔軟性がある。そのあり方が大切だと思う。京都議定書の精神とは、目的達成への考え方といえると思う。
10日朝には、オリヴィエ・ドゥルーズ ベルギー エネルギー・環境国務大臣が記者や環境NGOと朝食懇談会をベルギー大使館で開催しました。ドゥルーズエネルギー・環境国務大臣は、記者や環境NGOの質問に以下のように答えました。
Q.今回の会合で最も印象に残った点は何か。
A.日本の現在の立場には以下の3つの特徴があり、これらは一見矛盾しているように思える。この矛盾を解決するため、日本は現在全力投球しているように思える。
(1)日本は最後の最後までアメリカの参加が得られるように働きかけを続ける。
(2)日本はアメリカ抜きの批准の答えを出す準備がまだできていない。
(3)日本は京都議定書のプロセスを遅らせることを望んでいない。
Q.プロンクCOP6議長の削減目標2年先延ばし発言についてどう思うか。
A.プロンク議長は、オランダの下院の会合で、第一約束期間を2年間遅らせることを考えている人が一部にいると述べただけだ。これはただそのような発 言をしただけであって、議長の考えではないし、EUの考えでもない。EUは議定書を実行する上での運用ルールに柔軟性をもたせてもよいと考えている。しか し、2年間達成期限を遅らせることは運用ルールでの変更ではなく、議定書自体を変えることだ。

ピックアップ -経済団体連合会今井会長が川口順子環境大臣との懇談会を開催- 

7月5日、経団連今井会長が川口環境大臣と温暖化国際交渉について懇談会を開催しました。今井会長ら経団連関係者から、「日米欧が協調した国際枠組みに 向けて粘り強く交渉して欲しい。」、「シンクや京都メカニズムなどの目標達成手段を先に詰めた上で、各国ごとの削減目標と期限を改めて議論してはどう か。」などといった意見が出されました。
それに対し川口大臣は、「京都議定書に沿った形で、アメリカの参加を粘り強く働きかけ、2002年発効を目指して引き続き交渉を続けたい。」と答えました。さらに、「アメリカは、いつまでに対案を出すのか明らかにしていない。国際情勢は、いつまでもアメリカの出方を待つという雰囲気ではない。」と発言し ました。
経団連ホームページより

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