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vol.2 COP6直前インタヴュー ラルス・ゲオルグ・イェンセンWWFデンマーク

Q1.地球温暖化防止におけるCOP6の位置付けについて教えてください

COP6は、京都議定書を実施するための具体的なルールを決定し、各国が議定書を批准する条件を整備する場です。
COP3は削減目標を設定する会議でした。 COP6は、どのような手段でその削減目標を達成するかを合意する会議です。手段がきまらないと、せっかく決まった削減目標は意味がなくなってしまいます。また、COP6での決定は、国内の法的な枠組を決めることにつながっています。そのためCOP6で合意されるルールは、2008年から2012年とい う第1約束期間の削減目標達成だけを目的に設定されるのではなく、第2約束期間、第3約束期間と長期に渡って使えるものでなければならないと思います。京都メカニズム、吸収源、遵守制度に関するルールが決められ、企業による投資や政策といった社会的枠組が一度できてしまうと次に変更するには、また大変な時 間がかかってしまうでしょう。そのようなロスを避けるべく、今から長期的な視点でルールを設定する必要があるのです。
2002年の「Rio+10」で京都議定書の発効を考えた場合、COP6が最後のチャンスです。2002年の「Rio+10」がなぜ重要かというと、気候変動枠組条約の署名が始まった地球サミットから10年ということで政治的なモメンタムが残る会議であり、このタイミングでの京都議定書の発効は地球サミットのプロセス全体にとって非常に意味のあることだからです。もし、2002年の「Rio+10」に発効できなかったなら、政治的な意味でとても大きな 損失となると思います。
発効が2002年以降に遅れると第1約束期間に近くなりすぎるため、国内制度の構築が間に合わず温室効果ガスの排出傾向が急激に変更できなくなり、京都議定書の削減目標の達成が危うくなる国がでてくるでしょう。

Q2. COP6で何を決めるべきだと考えますか 

京都メカニズム(排出量取引、共同実施、クリーン開発メカニズム)吸収源、遵守制度など京都議定書の削減目標を達成する手段について詳細なルールを決定しなければなりません。

Q3. なかでも特に重視されている論点は何ですか

吸収源が一番重要だと思います。

Q4. COP6で、日本政府の果たすべき役割は何ですか

京都という日本の名前がついた議定書を汚さないようにすることです。COP6で採択するルールが、ホットエアーの売買を許し、吸収源で大きな量をカウントし、クリーン開発メカニズムの対象事業に吸収源、原子力、大規模水力発電、石炭火力発電(クリーンコール)などを入れるなどの抜け穴を認めることになれば、それは環境的には詐欺まがいの法律といわざるをえません。
気候変動は人類最大の試練です。今人類に突きつけられている課題は、化石燃料エネルギーからの脱却です。二酸化炭素を吸収するという名目で森林を増やす ことではないのです。気候変動の真の解決方法は、森林による二酸化炭素の吸収の増大ではなく、化石燃料からの脱却なのです。日本は、京都議定書という環境 問題における最大にして重要かつ包括的な国際約束が実効性ある形で運用されるよう声を挙げていかなければなりません。 

Q.5 地球温暖化防止を進めていく上で市民に期待することは何ですか

京都議定書で合意した削減目標の半分以上を吸収源で達成せず、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換といった化石燃料起源から排出されている二酸化炭素を確実に削減してゆくようなルールをCOP6で合意するよう日本政府に働きかけてください。また、地球温暖化問題に取り組むNGOを支援することも大切だと思います。
産業界もまた重要な役割を担っています。産業界は政府より先進的でより早く取り組みができると思います。大手企業が集まる古い業界ではどうしても変革に は時間がかかってしまいがちですが、ブリティッシュ・ペトロリウム(BP)やShellといった大手石油会社も自らの投資行動を見直し、新しく太陽光発電 や燃料電池などに投資し始めています。また、先進的な技術をもつ企業にとって変革はビジネスチャンスとなります。新しい産業を育てる社会からの直接的な働 きかけが必要です。企業の地球温暖化防止活動を促進するような環境づくりがとても重要だと考えます。
(2000.10.31 インタヴュー)

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