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朝までかかったCOP総会-大きな船は少しずつ向きを変えつつある

一日延長となったCOP最終日の様子を見るため、
10時頃、会場に着きましたが、
ぜんぜん始まる気配がありません。

会場をぶらついていたり、ラウンジのピアノを聴いたりして過ごしていたところ、
やっと夕方になり、
18時から議長によるインフォーマルな
ストックテイキング・ミィーテングを行うとの表示が出ました。

18時50分頃にストックテイキングミーティングが始まり、
続いて、京都議定書及び条約に関する二つの作業部会が開催されました。

議論がまとまらないまま、インフォーマルな形での
COP(正確にはCOP及びCMPのジョイント会合)の総会がスタートしたのは、
12月11日の午前1時頃でした。

予定より大幅に伸びており、
各国政府代表者の帰国の飛行機の便等を考えると
この夜のうちに会議を終了させなければならないことは明白でした。

これら一連の会議は、「Baobab」という名の
1000人も入れるような大きな会議場で行われました。

参加国だけで100を超える会議で、
いったいどのように議論がなされるか興味がありましたが、
各国の机の上にはボタンのついたマイクが置かれ、
ボタンを押すと議長が分るようになっており、
議長の指名を受けて各国の代表者が意見を述べるという仕組みになっていました。

なお、会議中、ベネズエラの代表は、
何度もボタンを押したのに議長が指名してくれないと
怒ってイスの上に立ち上げるというハプニングもありました。

議長を務めた南アフリカの外務大臣のマシャバネさんは、
冒頭、何としても朝までに会議をまとめようという
気迫に満ちた演説を行いました。

その後、各国の代表者が意見を述べてゆきました。
同時通訳に日本語が含まれず、
かといって、英語のスピーチを充分、理解する力もないので、
断片的に理解できたことと、まわりのNGOたちの拍手などの反応で
議論の大まかな流れを掴むように務めました。

それも難しいときは、
スピーチを行う各国代表者のキャラクターを楽しむこととしました。
それぞれ強烈なキャラクターの持ち主です。
なかでも、インドの環境大臣の
畳み掛けるようなスピーチの迫力に圧倒されました。

理路整然とした(ように思える)EU代表、
淡々としたように見えて情熱を秘めるグラナダ代表、
やや感情的な発言を繰り返すベネズエラ代表などが特に印象に残りました。

それぞれのスピーチによって
議論の方向が少しずつ動いて行くようにも見え、
国際会議というものが無味乾燥なものではなく、
極めて人間くさいものだという印象を持ちました。

また、それぞれの国がまじめに、
あるいは、自国の立場を有利にするため、
巧みな駆け引きをおこなっているようにも見えました。

議論がまとまらないと思えた午前2時40分頃、
議長から10分間時間を下さいと提案があり、
EUやインドの代表など少人数が会場の一角に集まり、
協議を始めました。

もちろん、何が話されているかは分りませんでしたが、
お互いの妥協案を出し、
今回のCOPを実りあるものにする大事な協議の場だったそうです。

会議再開は、3時30分頃に伸びました。
その後も数人のスピーチがあり、
インフォーマルな会議は3時40分頃に終わりました。
その頃には、会場の片隅で寝ている関係者も出始めました。

COP(正確に言えば、COP及びCMP)の総会=全体会合は、
午前4時10分過ぎに始まりました。
部屋は同じBaobabです。

二つの特別作業部会から、それぞれ報告がなされ、
また、それぞれ数人ずつの各国代表者によるスピーチがありました。
いったい、どうやって、決定するのか分らず、
もしかして多数決で決めるのだろうかと思っていたら、
テレビの時代劇のように、
議長が木槌をたたき「これにて決定、一件落着」といった感じの発言で、
午前5時半頃、一切は終了となりました。

そこで決定した事項については、
ここには詳述しませんが、
一時は何も決まらないのではないかと噂されたCOP17において、
京都議定書の第二約束期間への延長、
日本政府が望んでいたことでもある
京都議定書に変わる新たな枠組み(ダーバン・プラットフォーム)を作ることの決定など、
重要ないくつかの合意事項が達成されたのは、すごいことと思っています。

今回の合意事項が地球温暖化を防止するためには
全く不十分だとしても、大きな船がゆっくりと舵をとるように、
真の解決に向けて、ゆっくりと向きを変えたという印象を持っています。

疲れ果て外に出てみたら、清清しい夏の朝が始まっていました。

執筆:佐藤 剛
(宮城県地球温暖化防止活動推進センター ストップ温暖化センターみやぎ運営委員)

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