第19回締約国会議(COP19)

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なぜ2020年の排出削減目標を引き上げなければならないのか?(11月13日)

COP19の参加登録者数は、10,106人にのぼっています。内訳を見ると、政府関係者:4,779名、国連関係者:173名、専門機関等:151名、国際機関:446名、NGO:3,586名、メディア:971名、となっています。私は、国立環境研究所から参加登録をしており、上記区分では、NGOに含まれます。

COP会場では、文字通り朝から晩まで、多くの会議や各種イベントが開かれています。それらに参加する人の食事や飲み物が必要になりますが、1万人規模の会議となると大変です。COP19会場には、あちこちにコーヒーショップがありますし、フードコートも数か所にあります。フードコートでは、ポーランド料理や、ハラール(イスラム法上食べてもよいもの)、ベジタリアン食などが用意されていて、世界中の様々な国から来た、様々な宗教や信義・信条を持った人たちに対する配慮がなされています。

 

写真1:COP19会場内フードコートの寿司スタンド

 

さて、今日は、昨日紹介したCOP19の論点の2番目、「2)  2020年までの各国の排出削減目標の引き上げについて検討すること」について、解説します。なぜ、2020年目標を引き上げることが重要な課題となっているのでしょうか?

 COP19の全体会合で多くの政府代表が口にしていた、「ギャップ」という言葉に鍵があります。この文脈での「ギャップ」とは、先進国及び途上国が掲げている2020年の温室効果ガスの排出削減目標/削減行動をすべて足し合わせても、地球全体の気温上昇を2℃までに抑えるのに必要な排出削減量に比べると、とても大きな隔たりがあるということを意味します。

 

写真2:COP19開会会合の様子

 

国際社会の気候変動対策は何を目指しているのでしょうか?気候変動枠組条約は、「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させること」を条約が最終的に目指すべきところとしています。条約の文言そのままでは理解しづらいかも知れないので、少し噛み砕くと、「気候変動が、人間や自然に対して、ひどい影響を及ぼさないで済むくらいの大気中の温室効果ガス濃度に止めること」です。

 「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすことにならない水準」がどれくらいのことを指すのか、条約には書かれていません。条約ができてからも、科学者も研究を続けてきましたし、政策決定者も議論を重ねてきました。2050年までに地球全体でどれくらい温室効果ガスを減らさなければならないかということは重要な論点のひとつです。

 COP16(カンクン(メキシコ)、2010年)で採択されたカンクン合意では、「世界全体の気温の上昇が2℃より下にとどまるべきであるとの科学的見解を認識」するとされました。カンクン合意に基づいて、先進国は2020年の排出削減目標を、発展途上国は排出削減行動を条約事務局に提出しています。

 ここで問題になるのが、先進国の削減目標や途上国の削減行動をすべて足し合わせた場合、世界全体での排出削減量はどれくらいになるか、また、「世界全体の気温の上昇が2℃より下にとどまる」ということの実現に十分なのか、ということです。足し算すればわかるんじゃないの?と思われるかも知れませんが、これは簡単な作業ではありません。前提条件が国ごとにまちまちですし、幅を持たせた目標(たとえば、20-30%)もありますし、途上国はGDP当たりの削減目標を出したりもしているため、単純に足し合わせることができないのです。

 COP19のタイミングに合わせて、国連環境計画(UNEP)がこの「ギャップ」の問題に関する報告書、「排出ギャップ報告書2013年版」(The Emissions Gap Report 2013)を公表しています。UNEPは、2010年、2011年、2012年と同様の報告書を公表してきています。2013年版はこれをブラッシュアップしたものです。

 この報告書には、以下のようなことが書かれています。(筆者が報告書の要旨を抜粋して訳しました)

 

■現在の地球全体の温室効果ガスの排出レベルはどのようなものでしょうか?

 ―現在の排出レベルは、1.5℃あるいは2℃目標を達することができるレベルを大きく上回っており、排出は依然として増え続けています。2010年には、地球全体の温室効果ガスの排出の約60%を途上国の排出が占めています。

 ■2020年の温室効果ガスの排出レベルはどのようになると予測できますか?

―現行対策ケース(BAU)では、2020年の温室効果ガスの排出は年間59ギガトン(CO2換算)と見積もられています。2020年の各国の排出削減目標/排出削減行動が完全に実施された場合には、これより、年間3-7ギガトン(CO2換算)削減されることになります。

 ■2020年の排出ギャップの算定の最新の情報を教えて下さい。

―2020年の各国の排出削減目標/排出削減行動が完全に実施された場合であっても、2020年の排出ギャップは、年間8-12ギガトン(CO2換算)となります。

 ■2020年までにギャップを埋めることはできるでしょうか?

―2020年における排出削減の技術ポテンシャルは、約17 ± 3 ギガトン(CO2換算)です。これは、現行対策ケースの排出レベルと、2℃目標とのギャップを埋めるには十分です。しかし、対策をとるための時間がなくなりつつあります。                                              

■ギャップを埋めるためのオプションにはどのようなものがあるでしょうか?

―各国内の排出削減行動について、厳格なアカウンティングルールを適用することで、1–2 ギガトン(CO2換算)を埋める可能性があります。さらに、各国がより厳格な排出削減目標/排出削減行動を選ぶことで、2–3 ギガトン(CO2換算)を埋める可能性があります。さらに、現在の排出削減目標/排出削減行動の範囲を広げることで1.8ギガトン(CO2換算)を埋める可能性があります。上記3つを実現することによって、ギャップのおよそ半分を埋めることができます。残りの半分は、各国内及び国際的な排出削減行動の強化が必要です。これらの行動の多くは、各国の気候変動対策以外の国益に資するものとなるでしょう。

 

「ギャップ」に関連する問題を議論しているのは、強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム(ADP)と、実施に関する補助機関会合(SBI)です。ADPでは、2020年以降、国際社会が気候変動問題にどう取り組んでいくかについて、2015年末までに合意することになっています。2020年以降の枠組みづくり(ワークストリーム1)と、2020年までの目標の引き上げ(ワークストリーム2)の2つのテーマで議論が進められていますが、ワークストリーム2において、関連する議論が行われています。また、SBIでは、長期目標の妥当性及びその達成に向けての進捗状況のレビューを行っています。どのような成果が出てくるかを見守り、皆さんにお伝えしていきたいと思います。

写真3:宿泊しているホテル近くの建物。ここにもCOP19のロゴがあります。

 

文・写真:久保田 泉(国立環境研究所社会環境システム研究センター主任研究員)

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