第07回締約国会議(COP 7)

途上国問題

途上国問題(技術移転/キャパシティー・ビルディング、途上国への支援と補償問題)

技術移転/キャパシティー・ビルディング(条約第4条5項) 

気候変動枠組条約の第4条5項では、途上国が条約の約束を実施するために、先進国から途上国に環境保全技術およびノウハウの移転、それにともなう資金供与、途上国における能力の構築と向上に対する支援を行わなければならないと規定されています。
先進国は地球環境ファシリティー(GEF)などの既存の資金供与メカニズムを活用するとともに、途上国が投資環境を整備するなど努力の重要性を主張していました。それに対し、 途上国側は、先進国全体としての支援が不十分だと主張し、年間総額10億ドルに上る新しい基金の設立、技術移転がきちんと行われているかどうかを検証する組織や技術移転に関する情報を収集・発信する地域センターを作ることなどを要請していました。
また、途上国が温暖化対策に取組み、国別報告書の作成など条約上の義務を果たすためには、途上国側の人材育成などを通じた能力の構築(キャパシティー・ビルディング)が不可欠です。途上国側から、後発発展途上国(政府は最貧国と訳している)や島しょ国への特別の配慮や能力構築のための新しい資金メカニズムを要求していましたが、先進国は特に新しい基金の設立には非常に消極的な態度を示していました。 

途上国への支援と補償問題(条約4条8項、9項、議定書3条14項)

島しょ国のような気候変動の悪影響に脆弱な国への支援措置と条約や議定書の約束を達成するため、先進国が実施する対応措置によって経済的な影響を受ける国への補償という2つの議論が行われていました。
先進国はさらなる資金供与には消極的でしたが、島しょ国のような気候変動の悪影響に脆弱な国への支援措置については前向きに検討してもよいとの対応をしていました。しかし、産油国が先進国に対し、先進国による地球温暖化緩和策や温暖化対策によって生じる経済的な損失への補償も同等に扱うべきと主張し続けてきました。途上国は、議定書発効前からの先進国による迅速な対応を期待し、条約4条8項、9項と議定書3条14項で別々の決議をまとめるように要求していました。これに対し、先進国は、ひとつの決議まとめる主張をしていました。
サウジアラビアは、SB13でこの議論の進捗なしに、他の議論は進めさせないと発言するなど強い姿勢をとっていたため、先進国が産油国が要求する補償に対して、どのように対応するのかが、COP6での合意に向けた大きな鍵のひとつでした。 COP6では、技術移転、資金供与を始めこれら途上国に関する議論は後回しになり、先進国間で吸収源などで合意が成立せず、交渉は決裂しました。
COP6 パート2では、3つの基金の成立など合意が難しいとされてた論点についてボン合意が大臣によってまとまりました。また、COP6パート2の第2週目には、他の議論よりも先に、ボン合意の内容を踏まえた詳細部分がまとまり、COP7でマラケシュ合意となりました。 

COP7で決まったこと 

3つの基金の設立

条約にもとづく「特別気候変動基金」と「後発発展途上国基金」、そして京都議定書にもとづく「適応基金」の3つの基金が新たに設立されることになりました。しかし、途上国に対する資金援助は、次の2点で途上国が大幅に譲歩する形で合意されました。
 (1)援助する資金の額は明示されていないこと
 (2)資金の拠出は強制ではなく「自発的」なものであること
「特別気候変動基金」は、適応措置、技術移転、エネルギー・輸送・工業・農業・森林・廃棄物管理、途上国の経済多様化を支援する活動に対し、資金供与します。「後発発展途上国基金」は、国内適応行動計画の作成など後発発展途上国の支援に、資金供与します。この2つの基金のほかに既存の資金供与メカニズムである地球環境ファシリティ-(GEF)の増資の割増分や二国間あるいは多国間で行なわれる資金援助も条約の資金供与として認められました。
「適応基金」は、途上国における具体的な適応事業やプログラムに資金供与します。クリーン開発メカニズム(CDM)事業の収益の一部(認証排出量:CERsの2%)がその資金源になります。
能力構築(キャパシティー・ビルディング)については、途上国への支援だけではなく、東欧諸国などの経済移行国(EIT)に対する支援もまとめられました。技術、資金的支援は、附属書締約国が、GEF、多国間基金などを通じて行うことになりました。

後発発展途上国への配慮 

後発発展途上国専門家グループを設立することが決まりました。メンバーは、アフリカの後発発展途上国から5名、アジアの後発発展途上国から2名、 島しょ国から2名、附属書締約国から3名の合計12名です。

技術移転専門家グループの設立

技術移転を促進する方法を分析、検討するために技術移転専門家グループを設立し、年2回補助機関会合と同時に会合を実施します。メンバーは、アフリカ、アジア太平洋、ラテンアメリカ及びカリブ諸国から各3名、島しょ国から1名、附属書国から7名、国際機関から3名の合計20名です。

条約4条8項、9項と議定書3条14項

途上国の要望どおり、別々の決議がまとめられました。
* 条約4条8項、9項
後発発展途上国の作業プログラムの構築、後発発展途上国基金の設立、 GEF、特別気候変動基金、および二国間・多国間の資金を通じて支援を行うなど
* 条約3条14項
先進国は、議定書7条1項のガイドラインにしたがって、毎年の排出目録と一緒に途上国特に、条約4条8項、9項に示される途上国の社会的、環境的、経済的悪影響を最小限化するため、議定書の約束を実施するために議定書3条14項のもとでどのように努力しているか情報を提出する。また、この情報は、遵守委員会の促進部で検討される。
附属書国およびその立場にある他の附属書国は、以下のことを優先すること
 a.全ての温室効果ガス排出部門における市場の不完全性、財政的措置、関税ならびに補助金の削除及び段階的廃止
 b.環境に悪影響があり、安全でない技術の使用に関係する補助金の撤廃
 c.化石燃料の非エネルギー使用技術の開発に関する協力、支援
 d.温室効果ガスの排出が少ない進歩的な化石燃料技術、温室効果ガスを回収、貯蓄する化石燃料技術の両方あるいはどちらかの開発、拡散、移転に関する協力など
 e. 化石燃料に関する効率改善のための条約4条8項、9項にある途上国の能力開発強化
 f.化石燃料の輸出と消費に大幅に依存している途上国に対する経済多様化の手助け

条文の要約と解説 

条約4条5項 

附属書締約国は、途上国が条約を実施することができるように、環境保全技術及びノウハウの移転、技術へのアクセス機会の推進、それにともなう資金供与などについて、可能な措置を全て行わなければならない。また、先進国は、途上国の能力や技術の開発及び強化を支援しなければならない。支援をする立場にある国家もしくは機関も技術移転の支援を行ってもよい。 

条約4条8項 

締約国は、条約の約束の履行に当たり、気候変動の悪影響又は対応措置の実施による影響を受ける途上国(特に、次の(a)から(i)までに掲げる国に対するもの)の個別のニーズ及び懸念に対処するためにこの条約の下でとるべき措置(資金供与、保険及び技術移転に関するものを含む)について十分な考慮を払う。
 1.島しょ国
 2.低地の沿岸地域を有する国
 3.乾操地域、半乾操地域、森林地域又は森林の衰退のおそれのある地域を有する国4. 自然災害が起こりやすい地域を有する国
 5.干ばつ又は砂漠化のおそれのある地域を有する国
 6.都市の大気汚染が著しい地域を有する国
 7.ぜい弱な生態系(山岳の生態系を含む)を有する地域を有する国
 8.化石燃料及び関連するエネルギー集約的な製品の生産、加工及び輸出による収入又はこれらの消費に経済が大きく依存している国
 9.内陸国及び通過国
更に、この条項に関しては、適当な場合には締約国会議が措置をとることができる

条約4条9項

締約国は、資金供与及び技術移転に関する措置をとるに当たり、途上国の個別のニーズ及び特別な事情について十分な考慮を払う。 

議定書3条14項

附属書I締約国は、途上国(特に条約第4条8項及び9項に規定する途上国)に及ぼす社会上、環境上及び経済上の悪影響を最小化するような方法で、京都議定書の約束を履行するよう努めなければならない。議定書の第1回締約国会合(COP/MOP1)において、途上国に及ぼす気候変動の悪影響又は対応措置の影響を最小化するために、どのような行動が必要であるかについて検討しなければならない。この検討の対象には、基金の設置、保険及び技術移転が含まれる。

関連情報

* 関連情報 条約事務局(UNFCCC)の技術移転ページ(英語)
これまでの経緯や関連文書の一覧などを掲載。
* 関連情報 条約事務局(UNFCCC)のキャパシティー・ビルディングページ(英語)
これまでの経緯や関連文書の一覧などを掲載。
* 関連情報 条約事務局(UNFCCC)の資金メカニズムページ(英語)
これまでの経緯や関連文書の一覧などを掲載。
* 条約事務局(UNFCCC)の条約4条8項、9項と議定書3条14項ページ(英語)
これまでの経緯や関連文書の一覧などを掲載。

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