第07回締約国会議(COP 7)

遵守制度(議定書第18条)

遵守制度(議定書第18条) 

各国が京都で約束した削減目標をきちんと守るようにし、約束を守らなかった国に対しては、何らかの措置を与えるしくみが遵守制度とよばれるものです。
遵守制度については、京都議定書の第18条で定められています。法的拘束力のある措置を課す手続(制度)を採用する場合は、議定書を改正しなければならないと書かれていますが、制度の具体的な中身については何も定めていません。その詳細をハーグのCOP6で決定するために交渉が行われてきました。
リヨンで行われたSB13では、締約国が京都議定書の削減目標を守ったかどうかを検討し、その理由や状況に応じて適切な措置を課す機関(遵守委員会とよばれている)を新たに作ることがほぼ合意されました。また、この遵守委員会には、資金や技術がなくて守れなかった国に対して、助言や資金・技術提供などを行いその国が遵守するよう促進する部門(促進部とよばれている)と不遵守の公表、京都メカニズムの利用停止などの権利停止といった遵守させるインセンティヴがより強くはたらく措置を検討する部門(履行強制部または執行部とよばれている)の2つを作ることが決まりました。
最大の焦点は、履行強制部が決定する不遵守に対する措置です。議定書の義務を守るより大きなインセンティヴをもたせるために、措置に法的拘束力をもたせるのかどうかがポイントになっています。第18条には不遵守の措置に法的拘束力をもたせる場合、議定書を改正しなければならないと書かれています。日本は、改正の必要がない、法的拘束力のある措置をもたない手続に留めるべきとしています。ロシアやオーストラリアもこれを支持しています。一方、アメリカやEU、途上国など上記3カ国以外の国は、議定書に実効性をもたせるためには、法的拘束力のある措置をもつ手続きにするべきだと主張しています。
ボンで開催されたCOP6パート2での合意を踏まえ、COP7では11月9日閣僚級会合が始まる前に、どの議題よりもはやく合意が成立しました。
遵守委員会を設け、その中に促進部と履行強制部を設置することや両部の機能、構成、削減義務の不遵守に対する具体的な措置を定めるなど遵守制度の基本的な枠組みが合意されました。 しかし、履行強制部が決定する不遵守の措置に法的拘束力をもたせるかどうかの決定は議定書発効後に開催される議定書の第1回締約国会合(COP/MOP1)に先送りされました。

決まった不遵守の措置

(1)5条1項、2項、7条1項、4項(報告義務など)の不遵守の措置
 ・不遵守の宣言
 ・遵守行動計画の策定
(2)京都メカニズム参加条件の不遵守の措置
 ・京都メカニズムへの参加資格の停止
(3)削減目標の不遵守の措置   
 ・達成できなかった削減量の1.3倍を次の約束期間で削減する
 ・遵守行動計画の作成
 ・排出量取引でクレジットを売る資格を失う
遵守委員会のメンバーは20名(促進部が10名、履行強制部が10名)で、京都議定書が発効したあと開催される締約国会合で選ばれます。各部門とも、国連の5つの地域から各1名、島しょ国から1名、非附属書締約国から2名、附属書締約国から2名です。採決方法はコンセンサス(注:全会一致ではありません。反対がないという意味です。)ですが、それで合意に至らない場合は、4分の3の多数決となります。 履行強制部による採決には、さらに、附属書締約国メンバーの過半数と非附属書締約国メンバーの過半数の賛成が必要です(二重多数決)。
専門家審査チーム(ERT)の報告書、締約国の自己申告、または他の締約国による申し立てによって、遵守手続きがはじまります。他の締約国による申し立ての場合のみ、その申し立てが妥当かどうか、事前審査を行います。
促進部や履行強制部で扱われる事案に関する情報や、履行強制部で行われる検討対象国に対するヒアリングも基本的に公開です。ただし、促進部や履行強制部での検討対象となっている国が非公開を要請し、関係する部が非公開を決定すれば最終決定まで非公開となります。また、関係する部には、政府機関やNGOが情報提出したり、関係部が専門家に助言を求めたりすることができます。
専門家審査チーム(ERT)による審査の後、削減目標達成のための追加期間が設けられました。この期間に、不遵守のおそれがある附属書締約国は、排出量取引制度を使って排出削減量(ERUs、CERs、AAUs)を取得して、目標を達成し、不遵守とならないようにすることができます。
不遵守が問題とされた国は、削減目標の不遵守に対する措置についての履行強制部の決定に対して、議定書の締約国会合(COP/MOP)に上訴することができます。履行強制部の決定は、締約国から45日間に上訴がなければ最終決定となります。履行強制部の決定はCOP/MOPで上訴に関する決定が行われるまで有効です。
促進部の手続きは、事前審査が3週間以内と決められている以外は特に期限は決められていません。履行強制部の場合、手続きの開始が対象国に通告されてから最長で約35週間(約9ヶ月)で最終決定となります。京都メカニズム参加条件を満たしていないことの認定や、また満たしていないことに対する措置を検討する場合は、履行強制部の通常の手続きの期間を短くします(迅速手続きと呼ばれる)。その場合は、最長で約16週間で最終決定となります。

条文の要約と解説

第18条

京都議定書の第1回締約国会合(COP/MOP1)で、議定書に定められている条項の不遵守を認定し、その原因、種類、程度及び頻度を考慮しつつ不遵守に対する効果的な対処手続きを施す制度を承認しなければならない。また、拘束力のある措置を課する場合、議定書を改正しなければならない。

法的拘束力とは

京都議定書の法的拘束力の問題と不遵守の措置に対する法的拘束力の問題は、区別して考える必要があります。不遵守の措置に法的拘束力があるかどうかにかかわらず、京都議定書の削減目標には法的拘束力があることに争いはありません。議定書発効後に開催される第1回締約国会合(COP/MOP1)で不遵守の措置には法的拘束力をもたせないと決定されたとしても、削減目標を守ることに対する法的拘束力がなくなるわけではありません。もし、削減目標を達成できなければ、それだけで国際義務違反となります。
不遵守の措置に法的拘束力がある場合、遵守委員会が決定した措置に不遵守の国がしたがわないならば、(例えば、遵守行動計画の作成が決定されたが、その作成を行わないような場合)、遵守委員会が決定した措置にしたがわないことそのものが「国際義務違反(国際違法行為)」になります。そして、措置を履行するように他の国が法的対応(例えば経済制裁をとる、国際司法裁判所に訴えるなど)をとることができます。

関連情報

* 条約事務局(UNFCCC)の遵守制度ページ(英語)
これまでの経緯や関連文書の一覧などを掲載。

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