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ナイロビCOP12・MOP2会議に出席して(2006/11/28) プリント

 11月6日から17日にかけて、ケニアの首都ナイロビに於いて、気候変動に関するCOP12・MOP2会議が開催されました。私も会議の後半環境大臣の顧問として出席しました。

 COP・MOPの合同会議は昨年のカナダ、モントリオールで開かれた第一回に続いて二回目になります。開発途上国で治安もあまり良くないと云われるケニアでの開催には、果して無事に会議を終えることが出来るかという危惧もあった様ですが、何とか17日の夜までに予定された議事を全部終了して閉幕となりました。

 今回の会議を簡潔に総括すれば、今や地球温暖化の危険が目に見える現実として受け止められ、大部分の議論もそれを前提として行われたために、ポスト京都へ向けての交渉につながる形で会議を締めくくることが出来たのが最大の収穫であったと云えましょう。

 他方、開発途上地域の中でも最も多くの最貧途上国を抱えるサハラ以南のアフリカで会議が開催されたことは、地球温暖化問題の中核に南北問題が存在することを、更めて認識させることとなりました。

 もう一つ、今回の会議の特色として、地球温暖化は国際社会にとって最も危険な天然現象であるばかりでなく、最も重大な経済問題であるとの発言が相次ぎましたが、その際しばしば引用されたのが、英国政府が世界銀行の元チーフ・エコノミスト、ニコラス・スターン卿(Sir Nicholas Stern)に委嘱して作成したいわゆるスターン・レポートでした。実はこのレポートは2005年グレン・イーグルズG8首脳会議の際に、英国政府がポスト京都へ向けて米国の復帰を促すと同時に、将来中国、インドなど途上国の温室効果ガス大量排出国の排出抑制へ向けての第一歩を作る苦心の作として立ち上げた、「気候変動・クリーンエネルギー及び持続可能な開発に関する閣僚級対話」という長い名前の第2回会合が、本年十月初旬にメキシコのモンテレー市で、先進国、途上国双方の主要18ヶ国代表を招いて開かれました。この会議で既にレポートの概要が明らかにされていましたが、700ページに及ぶ全文は英国政府の公式決定を経て十月末に発表されたばかりです。英国政府は早速その概要を世界の主要語(日本語を含む)に翻訳してナイロビの会議に持参しました。公式会議の他、一般参加者、NGOなどを対象とするサイド・イベントの場にもミリバンド環境大臣、ウッド駐ケニア高等弁務官(英連邦各国駐在の英国大使)及びレポートを作成したニコラス卿以下チームの数名の代表が出席して、リポート作成の趣旨及び内容を説明し、その精力的な広報活動振りが印象的でした。(なおニコラス卿は11月28日に訪日し、国連大学で地球温暖化をめぐるパネル・ディスカッションに参加します。)

 この他今回の会議で具体的な課題として関心を集めたのが、「適応」(adaptation)と「クリーン・開発メカニズム」(CDM=clean development mechanism)の二つです。

 京都議定書はその中長期的目標として、地球大気中の温室効果ガスの濃度を一定レベルで安定させることを掲げていますが、もう一つ緊急課題として、現在すでに大気の温度上昇は始まっており、その影響で風水害の多発、海水面の上昇などが進行しているので、その被害を最小限に抑えるための措置を講ずる必要がある ― これが「適応」の概念です。南太平洋の小島嶼国が海水面の上昇によって水没の危険にさらされているのでどう対処するかとか、旱魃、砂漠化の影響によって水の確保の出来ない地域の住民に対して、どのような方法で水を供給するかといった類(たぐい)の問題です。

 もう一つのCDMは、途上国の温暖化防止プロジェクトを実施するために先進国が資金・技術の援助を行う方式で、開発途上国にとってはこのメカニズムが多く活用されればそれだけ自国への資金・技術供与が大きくなりますから望ましい制度ですが、開発途上国特にアフリカ諸国にとっては、CDMの対象国として先進国が選ぶのが中南米やアジア(中国を含む)などの特定国に偏っていて、もっとも資金の乏しい国には話が廻ってこないという不満があるのです。

 一方先進国側から見れば、工業化の進んでいない最貧途上国(その多くはアフリカ)では削減の対象となる温室効果ガス排出プロジェクトも殆どなく、CDMを活用することがむつかしいということになります。ナイロビの会議では、アフリカにおいてもCOの吸収力を高める森林の増殖などCDMの対象となり得るプロジェクトがあることを出来るだけ広くPRするなどの方法が議論された様ですが、アフリカ諸国でのCDM活用を一挙に高める様な具体案は仲々見つからないのが現実です。

 以上の様なナイロビ会議の全般を通じて、日本代表団はどのように活動したか、一言で云えば真面目に諸会合に出席して着実に任務を果たしたという事かと思います。

 会議の閣僚セグメント二日目(11月16日)のトップバッターとして行われた若林環境大臣の演説も、地球温暖化防止へ向けての国際社会の動きをバランス良く捉え、日本としては着実に京都議定書の目標達成へ向けて努力すると共にポスト京都へ向けても世界と共に進むことを強調した内容で、一人3分間の演説としてはあれ以上つけ加えることはむつかしかったと思います。

 しかし、初日に演説したスイス大統領が、世界中の地球市民と企業に向って環境税の負担を訴えることによって、温暖化が全人類の課題であることを強調し、あるいは英国のミリバンド環境相の様に、ケニアの農民の実情に触れることによって、アフリカの住民の生活を十分念頭においた演説であることを示すような工夫があれば、もっと良かったのではないかと思いました。ケニアへ来てみると、この国が東アフリカのリーダーとしてこれから飛躍したいと考えていることは、いろいろな文書やポスターを見てもよく分ります。日本では駅伝やマラソンの季節になるとケニアの選手が大活躍するニュースが毎回伝えられています。ケニアのPRをしながら地球温暖化防止の重要性を説く作戦は無いものか。是非皆さんも考えてみて下さい。

 今回COP・MOP会議で採択された決議文の多くは、2008年頃迄に方向を決めよう、具体的なシステムを作ろうという内容になっています。2008年には、日本で先進国首脳会議 ― いわゆるG8会議が開かれます。この会議でも温暖化を含む地球環境問題が取り上げられることは間違いありません。そしてこの首脳会議の議長は開催国である日本の安倍晋三首相がつとめることになります。安倍首相にとっては首相就任後最初の主要国際会議議長の仕事になる筈です。安倍さんによい仕事をしてもらう為に、日本のお役人にも一般市民にも、智慧と力とを出してもらって、温暖化防止の体制を2008年迄に出来るだけしっかりしたものにしておきたいと念じています。

パチャウリIPCC議長とマイケル・ザミットクタヤールAWG議長と

▲写真左:パチャウリIPCC議長と/ 写真右:マイケル・ザミットクタヤールAWG議長と

 
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