<排出者が費用負担>
地球温暖化が進行すると異常気象の頻発など企業活動や市民生活を脅かす様々な悪影響が表れることが予想できる。温暖化を防ぐだけでなく、こうした悪影響に対応するには多額の費用がかかる。この費用を二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出者が負担する仕組みを作れば、より効果的に温暖化を防止できるはずだ。
こうした考えを背景にする温暖化対策の推進メカニズムが税、補助金、排出権取引などの経済的手法である。温室効果ガスは様々な場面で排出される。これを効果的に規制するには、幅広い経済活動を対象にできる経済的手法が効果的だ。
<税と補助金>
温室効果ガスの排出量を対象に排出者の企業や個人に課税することで主に、
- (1)インセンティブ(誘因)、
- (2)財源の調達、
- (3)アナウンスメント、
の三効果が期待できる。
インセンティブ効果の一例は、企業が課税分を価格に転嫁することで価格が上がり需要が抑制されることだ。ほかに、例えば燃料としてCO2を比較的多く排
出する企業が、より排出量が少ない天然ガスの利用を増やすことも考えられる。財源調達を目的に課税した場合は、集めた税金を温暖化対策のための装置と技術の開発や導入を促す補助金に充てることができる。インセンティブ効果との相乗でより大きな効果を発揮する可能性もある。
アナウンスメント効果とは、企業や市民が税を納めることで温暖化問題に対する認識を高め、これを解決するための温室効果ガス排出量削減の重要性に対する理解を深め、対策のための行動を誘発することである。税は、不特定多数の排出者を広く対象にでき、温室効果ガスの排出量に応じて負担することになるので公平でもある。既存の徴税システムを利用できれば、徴
税コストもそんなに高くはならない。ただ、既存の税制と整合させるための調整作業が必要になる。
<余剰排出枠を取引>
排出量取引とは、国や企業などが一定の基準に従って温室効果ガスを排出する量の枠(排出枠)を売買することだ。排出権取引とも呼ばれることがあるが、厳密には正しい表現ではない。

温室効果ガス排出量の総量抑制を目的にした場合、図に示した企業同士の取引が典型例となる。企業に排出量の目標枠を配分し、対策を実施して排出枠が余った企業は、逆に対策が遅れて排出枠が不足した企業に余剰枠を売るのだ。ここでは、企業が排出枠の売却を狙って自社の排出量を減らすために努力する。排出枠の売買市場では温室効果ガスの種類ごとに排出量1単位あたりの価格が
決まり、社会全体で削減コストを最小化する方向に向かうはずだ。この場合、企業に対する最初の排出枠の割り当ては、過去の排出量の実績や入札で決まると考
えられる。
排出量取引は、CO2など温室効果ガス6種の排出量削減を先進国に義務づけた京都議定書も国内対策の補完的手法として認め、欧米で研究が進んでいる。日本でも一部の企業が売買仲介事業への参入を始めた。
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