1.国際ルールの合意作り避ける
<マラケシュ合意までの道のり>
温暖化防止の国際的な取り組みは1990年代に本格化した。1992年の国連環境開発会議(地球サミット)で150カ国以上が気候変動枠組条約(地球温暖化
防止条約)に調印(現在は185カ国と欧州委員会が批准済み)。1997年の地球温暖化防止京都会議(COP3)では京都議定書を採択し、議定書が定めた
先進各国は、温室効果ガス排出量削減の義務的な数値目標を公約した。
2000年11月に開催された地球温暖化防止ハーグ会議(COP6)では京都議定書が定めた二酸化炭素(CO2)など温室効果ガス6種の排出量を削減す
る国際ルール作りを目指したが合意にいたらなかった。さらにその後、2001年3月にはブッシュ米大統領(共和党)が京都議定書の不支持を表明するなど、
国際規模での温暖化防止は具体化の一歩手前で大きな障害が立ちはだかることとなった。
そして2001年7月にドイツのボンで開催されたCOP6再開会合では、運用ルールの中核的要素についての基本的合意が得られ、同年10月末からモロッ
コのマラケシュで開催されたCOP7において、京都議定書の発効に向けた運用ルールの成文に最終的な合意が得られた。
<温暖化のメカニズム>
温暖化はどのようにして起きるのか。
太陽光エネルギーのほぼ半分は地表まで到達する。そのエネルギーを吸収し暖められた地表は、赤外線を放射する。大気中の一部ガスはこの赤外線を多く吸収
する一方、赤外線を再放射しながら大気を暖める。こうした赤外線吸収率の高いガスを温室効果ガスと呼び、この大気中濃度が高ければ高いほど温暖化が進む。
議定書が削減対象とする温室効果ガスは二酸化炭素(CO2)、一酸化二窒素、メタン、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、六フッ化硫黄(SF6)の計6種である。
温室効果の程度はガスごとに違い、CO2を基準にした相対値(地球温暖化係数=GWP)ではかる。CO2を1とするとメタンのGWPは21、一酸化二窒
素が310、HFCとPFCはそれぞれ数百から数千、SF6は23,900となる。GWPが高いほど温室効果は大きい。
<IPCC>
地球温暖化のメカニズムを科学的に解明し、様々な影響などを予測する国際機関が「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」である。IPCCは1990年
に地球温暖化の脅威を訴えた第一次評価報告書を発表した。これを基に国際的な温暖化対策の討議が本格化し、1992年の地球サミットにおける地球温暖化防
止条約の調印をもたらした。
2001年に発表された第三次評価報告書は、地球の平均気温が過去50年間に上昇した原因を人間の経済活動などによる温室効果ガス濃度の上昇によるもの
としている。過去100年間に約0.6℃上昇した平均気温は、今後100年間には1.4〜5.8℃上がり、海面水位は9〜88センチメートル上昇すると予
測されている。今世紀中に温室効果ガスの濃度が安定しても、気温は上昇し続けるとも警告している。熱・寒波、洪水、干ばつなどの異常気象が頻度を増し、水
や食料の確保にも大きく影響するという。
ただ、こうした悪影響はエネルギーの効率的な利用などの社会経済的対策で緩和できると分析している。
2.議定書の概要と6ガスの削減
<先進国に排出量削減義務>
1997年12月に開かれた地球温暖化防止京都会議(COP3)は、二酸化炭素(CO2)を中心とする温室効果ガス6種の排出量削減スケジュールを定めた京都議定書(以下「議定書」という。)を採択した。議定書は各国が地球温暖化対策を共同で実施するための唯一の国際的な枠組みである。
議定書は気候変動枠組条約(地球温暖化防止条約)を批准した締約国(185カ国と欧州委員会)のうち先進国(東欧を含む38カ国と欧州委員会)にそれぞ
れ目標量を示して6種の温室効果ガス削減または抑制を義務づけ、達成時期を定めている。なお、発展途上国には排出量削減を求めていない。
<森林を吸収源に>
議定書は、温室効果ガス排出量の削減コストを低く抑え、効率良く削減目標を達成する仕組みとして京都メカニズムを定め、国内対策を補完するためにこのメカニズムを利用できるとしている。
京都メカニズムとは先進国間同士の排出権取引、共同実施、先進国と途上国間のクリーン開発メカニズムの3種を指す。先進国が発展途上国で排出量削減事業
を実施し、ここでの削減量を自国の削減量に算入できる制度がクリーン開発メカニズムだ。事業を実施する相手が先進国ならば共同実施と呼ぶ。
議定書はまた、森林をCO2などの吸収源とみなし、光合成の過程で森林が吸収する量を大気中からの削減量として認める。
ところが、COP3ではこうした新しい仕組みを実施するために必要な細かい国際ルールは盛り込むことができなかった。京都メカニズムを実行するには、それぞれの仕組みの設計や共通の運用ルールの設定が必要となる。
たとえば、森林は地域や種類、樹齢によってCO2などの吸収量が違い、算定方法などの統一が必要である。
<遵守制度が課題>
もう一つの大きな課題は、議定書が定めた削減目標の達成義務を各国にどう遵守させるか決まっていないことである。
議定書の排出量削減目標には法的拘束力があるが、それが実際に守られたかどうか判定し、遵守されなかった場合の理由を検証する制度はなく、守らない国に対する罰則なども決まっていなかった。
そのため、1998年11月には地球温暖化防止条約の締結国が「ブエノスアイレス行動計画」を採択し、京都メカニズム、遵守制度、先進国からのさらなる
技術移転や資金提供のメカニズムなどの途上国支援といった個別要件の運用や実施に関するルールを2000年11月の地球温暖化防止ハーグ会議(COP6)
までに合意することとされた。
1999年の締結国の閣僚会議では、多くの国が地球サミットから10年目に当たる2002年に開催される「持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)」で京都議定書を発効させようと呼びかけた。
だが、COP6では国際ルールの合意に至らず、米国の不支持などの逆風も吹き始めた。
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